ゴミ屋敷は本人だけの問題ではありません。近隣住民にとって、どのようなリスクがあるのか、実際に起きたトラブルなども合わせて紹介しています。特に火災は重大な問題で、死亡者が出たケースもあり注意が必要です。被害を防ぐ方法もまとめました。
ゴミ屋敷は近隣住民にとって大きなリスク
ゴミ屋敷は存在するだけで、近隣の住民にとってリスクが高い建物です。特に、火災の原因になりやすく、場合によっては近くの家も巻き込まれてしまいます。
また、火災が起こらなくても、悪臭や害虫の発生なども迷惑です。近くにゴミ屋敷がある場合、早急に対応してもらう必要があるでしょう。
火災
火災はゴミ屋敷がもたらす被害の中でも、最も危険な現象です。規模が大きくなれば、死亡者が出る可能性もあります。
いつ何が原因で火災が起こるかわからないため、ゴミが外まであふれているなら注意が必要です。普通の家でも火災のリスクはありますが、ゴミ屋敷の場合は危険度が上がります。
臭いや害虫など衛生状態の悪化
外までゴミがあふれだしたゴミ屋敷は、衛生面でも大きな問題です。ゴミのニオイが周囲に漂ってくれば、悪臭に悩まされます。
また、隠れる場所が多い環境は、害虫にも好まれます。生ゴミが放置されていれば、さらに虫は増えてしまうでしょう。
ゴミ屋敷は住んでいる本人だけの問題ではなく、地域全体に被害を及ぼします。
ゴミ屋敷で火災が起こる原因は?
ゴミ屋敷で火災が起こる原因は、ゴミの量の多さです。ゴミは燃えやすいものが多く、量が多いと物と物の間隔が狭くなります。また長年放置された家電の故障や、積もったホコリも原因です。
あまり人が寄り付かないゴミ屋敷は、放火のターゲットにもなりやすいため、さらに火災が起きやすくなります。
大きな火災になるリスクが高い環境
大きな火災が起きる原因として、家を埋め尽くしているゴミがあげられます。通常、普通の家なら、家具や物の間に隙間があり、一定のところで燃え移りにくくなるなります。
しかし、ゴミ屋敷は、すべての空間がゴミで埋め尽くされているため、際限なく火が燃え移ってしまうのです。ちょっとした火の不始末でも、あっという間に大きな火災に発展しやすいでしょう。
特に燃えやすい紙ゴミや生ゴミを溜め込んでいると、大規模火災のリスクは増加します。
また、溜め込んだゴミ以外にも、積もったホコリが火災を引き起こすこともあります。電化製品のプラグやコードの劣化による『トラッキング現象』により、熱や火花が発生するためです。火を使っていなくても火災の原因になり、危険です。
放火のターゲットになる場合も
ゴミ屋敷は、放火のターゲットにもなります。悪臭や害虫が原因で周辺住民が寄り付かず、放火しやすい環境が生まれるためです。
また、中にはゴミ屋敷をなくしてやろうと考えて放火されることも考えられます。家の外までゴミがあふれていれば、放火するのも容易いでしょう。すぐに火が燃え移るものが外に出ていれば、犯罪者にとって格好のターゲットです。
死亡者も出たゴミ屋敷の火災事例
実際に、死亡者が出たゴミ屋敷の火災もあります。主な事例では愛知県豊田市や福島県郡山市で、大規模な火災が起こりました。このケースでは、近隣住民が何年もゴミ屋敷に悩まされ、自治体側も強制的にゴミ処分を実行しています。
愛知県豊田市
2015年に起きた愛知県豊田市で起きた火災では、両隣の家まで火が燃え移っています。それ以前にも5回のボヤ騒ぎが起こり、近隣住民も火災のリスクを心配していました。
結局ゴミ屋敷は全焼し、隣の木造住宅も全焼、反対側に位置していた住宅も半焼と大きな被害です。
このゴミ屋敷は行政による強制執行が2度行われていたものの、住人が同じように再度ゴミ屋敷化してしまい解決に至りませんでした。外にはみ出したゴミは近隣住民が清掃をしていましたが、それでも自宅までは踏み込めず、最終的に大きな火災を引き起こした事例です。
福島県郡山市
2016年には、福島県郡山市のゴミ屋敷で火災が発生し、住人の男性が死亡する事件が起こりました。この住宅も強制代執行が行われ、一度はゴミが撤去されています。
しかし、結局再び住人がゴミを集めだし、また同じようにゴミ屋敷化してしまいました。この例ではゴミ屋敷の住人が亡くなったのみで周囲の住宅までは被害が及んでいませんが、近くに住宅があれば危険もあったでしょう。
ゴミ屋敷による被害を防ぐ方法は?
ゴミ屋敷による被害を防ぐには、近隣住民にもできることがあります。たとえば行政へ訴えるなど、直接的に迷惑していることを伝えれば、何らかの対応を取ってくれるためです。自治体にもよりますが、実際に強制執行を実施したているケースもあります。
強制的な撤去にいたらなくても、行政から該当のゴミ屋敷の所有者には働きかけてくれるため、一度相談してみるのも1つの方法です。
また、現実的な備えとして、火災保険に入っておくことも検討しましょう。近くに火災のリスクが高い建物が建っているのであれば、自衛のために保険に入ることで、万が一の場合に家財を守れます。
行政への働きかけ
まずは行政へ働きかけてみましょう。ゴミ屋敷対策の窓口を設けている自治体なら、直接相談できます。具体的な相談窓口がなければ、住まいの相談などを請け負う部署に連絡してみましょう。
住民が困っている場合、自治体側も何らかの措置を取る義務があります。ゴミ屋敷の住人に改善を依頼するなど、役所側から通達を行うなど、対応も期待できるでしょう。
愛知県名古屋市では強制執行を実施
ゴミ屋敷は、自治体にとっても不都合な建物です。周辺の地価が下がることがあれば、街全体の活性化ができなくなります。たとえば、愛知県名古屋市では強制執行を実施しています。
住民が住みやすい街を作るため、ゴミ屋敷や空き家に対して、自治体が強制的に片付けるよう指導も可能です。
名古屋市以外でも多くの自治体が何らかの対応を取ってくれます。もちろん、強制的に片付けされるまでには、所有者との話し合いや勧告が必須であり時間もかかる事になりますが、住人が拒否してもゴミ屋敷は改善に向かうでしょう。
火災保険に入っておく
万が一のために火災保険に入っておけば、ひとまず家財を守る手助けになります。隣の家が火事を起こして、もらい火が発生してもその住人に賠償請求できないためです。
もし、ちょっとした過失で火元にすべての責任が被せられるのでは、ゴミ屋敷に住んでいる人だけでなく、普通の住宅に住む人も不安です。大きな火事になってしまえば、周辺の家に多額の損害金を支払うことになってしまいます。そのため、『失火責任法』では、火元の住人に賠償請求できないよう、定められているのです。
火災保険にはさまざまなタイプがあるため、自分の住宅に適したものを選びましょう。もし火災保険が切れているなら、早めに見直しておくことをおすすめします。万が一のためにも、火災保険については確認しておきましょう。
損害賠償が得られる確率は低い
ゴミ屋敷の住人が火災を起こしたとしても、損害賠償が得られる確率は高くありません。火事の原因がゴミ屋敷であるとはっきりわかったとしても、火災の発生元にすべての責任を負わせることは難しいためです。
また、ゴミ屋敷で強制代執行が行われているような家は、高齢であったり単身者である可能性が高く、そもそもお金をそれほど持っていないことも考えられます。賠償金を請求しても、ないところからは取れません。
国がゴミ処理にかかった費用を請求していることもあり、火災の責任まで賠償する財力は期待できないでしょう。
近所にゴミ屋敷がある程度なら火災が起きても遠くまで燃え広がるリスクは少ないですが、隣がゴミ屋敷になってしまった場合は問題です。あまりにもひどい状況で、自治体の対応でも改善しないようなら引っ越しも検討したほうが安全です。
まとめ
ゴミ屋敷は住んでいる本人だけでなく、近隣住民にとっても大きなリスクがあります。悪臭や景観悪化など見ただけでわかる問題もありますが、火災のリスクも高く危険です。
自治体に対応を任せれば、強制的にゴミの処分ができるケースもあります。ただし、住人自身が変わらない場合はすぐに同じ状態に戻ってしまい、解決に至らないため注意も必要です。
火災保険への加入や、どうしても改善されない場合は引っ越しの検討なども含めて考えていきましょう。