ゴミ屋敷が生まれる原因とは?高齢化が進むと更に増加するかも

高齢者の家はゴミ屋敷化するケースが多く、一度ゴミが増えると、原状回復は困難です。まずはなぜ高齢者がゴミを溜めこんでしまうのか、ゴミ屋敷化するとどんなデメリットがあるのかを考えてみましょう。併せて、ゴミ屋敷への対策や取るべき手段も紹介します。

本記事の監修者

遺品整理士:目黒 大智


一般社団法人遺品整理士認定協会 認定遺品整理士(第 IS26076号) 年間1000件以上の不用品回収、遺品整理案件に携わる。「遺品整理・不用品回収の片付け業者 CLEAR-クリア-」代表取締役。詳しいプロフィール
目次

ゴミ屋敷の住人とはどんな人?

ゴミ屋敷とは、家中にゴミや不用品が溢れている家のことです。あまりにもひどいゴミ屋敷になると、建物内部のみならず敷地いっぱいにゴミが積まれていることもあります。

傍から見るとゴミに溢れた家は生活しにくそうですが、ゴミ屋敷の住人は特に不都合を感じていません。このような家に暮らす住人は、どのような人なのでしょうか。

ゴミ屋敷化する理由は様々

家がゴミ屋敷化する理由は人それぞれですが、よくあるケースとしては、次のようなものがあります。

  • 忙しくて時間が無い
  • うつ病
  • 発達障害
  • 認知症

ゴミ屋敷化したのが「時間が無いから」などの理由なら、本人のやる気や状況次第では片付けが可能です。

しかし、原因が病気や認知症にあるならば、住人だけでゴミ屋敷を片付けるのは困難でしょう。「ゴミ屋敷は正常な状態ではない」と住人が気付かない限り、状況の改善は望めません。

半数が高齢者と言われる

片付け専門業者にゴミ屋敷の片付けを依頼するのは、半分以上が高齢者だそうです。連絡してくるのはゴミ屋敷の住人であるケースは少なく、大半がゴミを扱いかねる家族からの要請です。

高齢者の家がゴミ屋敷になりやすい要因は様々ありますが、大きな要因の1つは『高齢者は物を捨てることに抵抗がある』ことです。貧しい時代を経験している人は、物を容易に捨てられません。現代の若者よりも物を大切に思う気持ちが強く、一見するとゴミのような物でも、大切にとっておきたくなるのです。

これは考え方の違いで、子供や孫がいくら説得しても効果がない場合が多いでしょう。

高齢者の家がゴミ屋敷化する原因

高齢者の家がゴミ屋敷化しやすいのは、体力・気力の低下、認知症、周囲からの孤立が主な原因です。それぞれのケースについて、詳しく見てみましょう。

体力や気力の低下

高齢になると体力や気力が低下し、片付けを完遂するのが困難になります。片付けは単純作業に見えますが、実際は『要・不要を判断する』『正しく分別する』『ゴミをまとめて運搬する』などする必要があり、重労働です。

高齢になって体力がなくなれば、ゴミを集めて分別するだけでも一苦労でしょう。さらに、集めた不用品をどうするか、どのように分別するかを考えねばならないため、頭や気力も使います。

高齢者なら、少し片付けに取り掛かっただけで疲れ果ててしまう人もいるでしょう。

分別が面倒でゴミを溜めてしまう場合も

ゴミ分別のハードルが高いと、高齢者はゴミを捨てるのが面倒になります。

近年はゴミの分別が複雑になり、ゴミ捨ては以前より難しくなりました。ゴミを出す場合は、指定日に間に合うようにゴミを分別したりまとめたりしなければなりません。

ところが、この分別作業が高齢者にとっては苦痛で、骨の折れる作業となります。ゴミの分別が苦手な人は、「文句を言われるよりは家に溜め込んだ方がマシ」と考え、家をゴミ屋敷にしてしまうのです。

認知症

認知症とは病名ではなく様々な症状や状態を総称したものです。主な症状としては、次のようなものがあります。

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 実行機能障害
  • 理解力・判断力の低下

認知症になると、自分が何をしていたかわからなくなったり、時間や場所が把握できなくなったりします。さらに、物事の計画を立てたり実行したりすることも困難になるため、家を効率的に片付けるのはほぼ不可能になるでしょう。

また、理解や判断力が失われれば、物の要・不要も判断できません。ゴミの分別も難しく、家を片付けようにもどこから手をつけ、どのようにしたらよいかが分からなくなるのです。

寂しさ

社会と切り離されがちな高齢者は、多くが寂しさを感じています。高齢になるほど友人や家族との別れが増えていくため、日々の生活でも孤独を感じる場面は多いでしょう。

やがて、「家を片付けても自分だけ」「どうせ1人だから」という考えが強くなれば、家の片付けをする気力は失われます。『セルフネグレクト』と呼ばれる自己放任状態にまで発展すれば、生きる気力さえなくなってしまうでしょう。

この状態になると、ゴミの処理や分別は1人ではどうすることもできません。家がゴミ屋敷化したことで、周囲からの孤立はさらに深まり、最悪『孤独死』に至るケースもあります。

ゴミ屋敷は周辺地域にもリスクがある

不衛生なゴミ屋敷は、当事者だけの問題ではなく、周辺地域にも悪影響を与えます。ゴミ屋敷が存在することにより、周囲にはどんなリスクがあるのでしょうか。

異臭や害虫

ゴミはゴミ屋敷の敷地内に収まっているかもしれませんが、悪臭はゴミ屋敷の外にも充満します。生ゴミや水分の多いゴミが多ければ、周辺の家は臭くて窓を開けられなくなるでしょう。

また、漂う悪臭に加えて、害虫や害獣の発生も大きな問題です。生ゴミに湧くハエ、ゴキブリ、ネズミなどは自由に動きまわるため、きれいにしている近隣の家にも忍び込みます。住民は常に伝染病や害虫・害獣による食害を心配しなければならず、健康を脅かされることになるでしょう。

このように、1軒のゴミ屋敷があるだけで、周辺の衛生状態は著しく低下してしまうのです。

火事の危険性

ゴミ屋敷で一旦火災が起これば、周辺の家も無事には済みません。ゴミ屋敷は火の燃料となるゴミが豊富にあるため、火は勢いよく燃え上がり、周囲の家まで焼き尽くすでしょう。

ゴミ屋敷の住人に火災への備えがあればよいですが、大抵の場合そのようなものはありません。スプレー缶やカセットボンベを炎天下放置していたり、放火に気を付けるようなそぶりも見せなかったりするケースがほとんどです。

ゴミ屋敷周辺では、ゴミ屋敷の住人よりも近隣住人の方が不審火や不慮の火災を心配させられることになります。

ゴミ屋敷が大規模火災を行き起こした例も

2015年8月、愛知県豊田市にあるゴミ屋敷から出火した火が広がって、両隣の家まで全半焼させるという事件が発生しました。このゴミ屋敷は過去に数回ボヤ騒動を起こしていたことから、周辺住人は常に火災の恐怖に苛まれていたそうです。

この愛知県のケースでは、出火原因は『蚊取り線香の火が周囲に引火したこと』だそうですが、ゴミ屋敷は些細なことでも大火事に繋がります。ホコリの溜まったコンセントから火花が放電したり、ガス漏れなどによって火が付いたりという危険は、通常の家よりも大きいでしょう。

ゴミ屋敷が近ければ、近隣には常に火災リスクがつきまとうのです。

周囲ができる対処法とは

ゴミ屋敷の側に暮らすことは、不快かつ大きなリスクを伴います。とはいえ、ゴミ屋敷の中にある物はその家の『財産』となるため、たとえゴミでも他人が勝手に処分することはできません。ゴミ屋敷が近くにある場合、周囲はどのように対処すればよいのでしょうか。

行政に相談

ゴミ屋敷に対しては、住民が直接話をするのではなく、行政を介するのがベストです。

現在はゴミ屋敷を取り締まるための法律は存在せず、ゴミ処分は屋敷の主の許可を経て行わなければなりません。ところが、ゴミ屋敷の住人がゴミの処分に同意するケースはほぼ無く、大抵の場合近隣住人とのトラブルに発展してしまいます。このような事態を避けるためにも、ゴミ屋敷との交渉は行政に任せるのがよいでしょう。

自治体によってはゴミ屋敷に強く対処できる『ゴミ屋敷対策条例』を施行しているところもあります。例えば『足立区生活環境の保全に関する条例』を持つ足立区では、区が立入調査をして違反状態を確認すれば、行政代執行も可能です。近隣のゴミ屋敷トラブルについて悩んだら、なるべく早い相談をおすすめします。

交流を持つ

ゴミ屋敷の住民が孤独感を強めている高齢者なら、近所付き合いを積極的に行うことも有効です。始めは拒否されても、何度も声掛けをして『誰かが気にかけてくれている』と感じてもらえれば、孤独感は軽減され、気力が湧いてくる事で、ゴミを片付ける交渉も進むかもしれません。

まとめ

ゴミ屋敷に住む人には高齢者が多く、その原因は認知症、強い孤独などが考えられます。ゴミ屋敷が側にあるだけで周辺の住人は健康被害や火災を恐れて暮らさねばならず、快適な暮らしができません。

近所の家がゴミ屋敷化してしまったら、速やかに行政に相談し、大きなトラブルを防ぎましょう。

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