ゴミ屋敷を直接取り締まる法律はない。専門家への相談がオススメ

分譲マンションがゴミ屋敷化した場合、隣接する部屋も悪影響は免れません。ゴミ屋敷があると知れれば資産価値も下がるため、ゴミの解消には早急な対処が望まれます。マンション内のゴミ屋敷が生まれる背景や、どのように対処すべきかを紹介します。

本記事の監修者

遺品整理士:目黒 大智


一般社団法人遺品整理士認定協会 認定遺品整理士(第 IS26076号) 年間1000件以上の不用品回収、遺品整理案件に携わる。「遺品整理・不用品回収の片付け業者 CLEAR-クリア-」代表取締役。詳しいプロフィール
目次

集合住宅のゴミ屋敷問題が増加中

戸建てのゴミ屋敷は外からでもわかりますが、マンションやアパート室内の汚さを外から気付くのは困難です。

現在、集合住宅内のゴミ屋敷は増加の一途をたどっていると言われており、社会問題にまで発展しています。集合住宅におけるゴミ屋敷特有の問題点は、どこにあるのでしょうか。

外からはわかりにくい

集合住宅の場合、扉が閉まっていれば中の様子は分かりません。窓も開けずカーテンを閉め切っていれば、他人が干渉するのは不可能に近いでしょう。

また、集合住宅の一室をゴミ屋敷にしている人の多くは、仕事を持ち、身なりも小ぎれいな社会人です。外見とゴミ屋敷が結びつかないため、どの部屋がゴミ屋敷化しているのかを窺い知るのは困難でしょう。

気づいた時には深刻化している

ベランダにまでうず高くゴミが溢れている、部屋から悪臭が漂う、害虫や害獣が増えるなどすれば、周囲の人もおかしいと感じます。しかし、周囲が気付く頃には状態がすでに深刻化しており、『住人1人で片付ければ済む』というレベルはとうに過ぎているでしょう。

集合住宅は密室になりやすく、部屋の汚さが発覚するのは手が付けられないほどになってから、というパターンがほとんどなのです。

ゴミマンションが増加する理由

ゴミマンションが増加しているのは、1人世帯が多いこと、現代に個人主義が広がっていることなどが原因と考えられます。それぞれの理由について詳しく見てみましょう。

単身世帯の増加

ゴミ屋敷と言えば高齢者が多いイメージですが、ゴミマンションの場合は単身世帯が多く見られます。ほとんどの人は自立してきちんと仕事を持っているため、一見するとごく普通の社会人にしか見えないでしょう。

では、なぜ普通の社会人が部屋をゴミだらけにしてしまうのかといえば、多くの場合、きっかけは仕事のストレスです。自分のキャパシティ以上の仕事を任されてしまった、日々の業務でとにかく気を使う、など状況は様々ですが、仕事に神経をすり減らす人ほど私生活がおろそかになってしまいがちです。

ゴミを分別したりまとめて出したりが面倒になっても、自分1人なら誰も文句を言う人はいません。ゴミにまみれて暮らしていくうちに感覚がマヒし、ゴミだらけでもなんとも思わなくなるのです。

周囲との繋がりが薄く孤立しがち

ゴミマンションが増える背景として、若者ほど個人主義が浸透しているということも挙げられます。

ニッセイ基礎研究所の調査によると、ゆとり世代66万人、団塊Jr.世代で105万人に『社会的孤立』が窺われるそうです。これは団塊世代の33万人、75歳以上の36万人を合わせた数よりも多く、若者の社会的孤立が深刻化していることが分かります。

若い世代に多く見られるのが、『他人に干渉されたくない、したくない』『非対面の付き合いを好む』人です。このような人は周囲との繋がりが薄くなりがちで、困った時に頼る相手がいません。仕事の愚痴をもらしたり部屋の片付けについて相談したりできず、トラブルや悩みは自分で抱え込んでしまいます。

精神状態が不安定になるほど片付けや掃除が出来なくなるため、ゴミ屋敷化を食い止めるのは困難になるでしょう。

ゴミ屋敷の悪影響

マンションがゴミ屋敷化すると、衛生状態が著しく悪くなるほか、火災や事故の発生リスクも高まります。さらに汚さのレベルによっては、部屋の資産価値さえ下げてしまうでしょう。

部屋がゴミ屋敷化すると、どんな悪影響が考えられるのでしょうか。

害虫や異臭など衛生状況の悪化

どんなに部屋を綺麗にしていても、近くにゴミを溜め込む部屋があれば、害虫はそこからやってきます。また、生ゴミ等も溜め込んでいるなら、常に部屋からの悪臭に悩まされるでしょう。

ゴキブリやハエなどの害虫は、その身に多くの危険なウィルスや細菌をまとっています。感染すれば深刻な健康被害を受けるかもしれません。また、害虫が苦手な人にはその姿さえストレスです。害虫におびえながら暮らせば、部屋での生活そのものをストレスに感じるでしょう。

火災や事故のリスク

部屋にゴミが多いほど、火災が起きたときは燃え広がりやすくなります。また足の踏み場もない汚い部屋なら、転倒などで思わぬ怪我をする可能性も高くなるでしょう。

特に、掃除を全くしない部屋は、コンセント内部にホコリが溜まって発火したり、漏電したりするリスクも高くなります。壁一枚隔てただけのマンションの場合、火災が発生すれば延焼は避けられません。なんらかの拍子に火がつけば、ゴミが燃料となって、あっという間に燃え広がるでしょう。

資産価値の低下

マンションの場合、ゴミだらけの部屋が資産価値を低下させます。マンションの価値は、「買いたい」と思う人が多いほど上がるものです。ところがマンション内にゴミ屋敷があるとなれば、あえてそのマンションに住みたいと思う人はいないでしょう。

マンションを買う人は設備や立地を含め住環境も重視するため、環境に悪影響を及ぼすゴミ屋敷の存在は、マンション全体のマイナスとなるのです。

ゴミマンションの解決策は?

マンション内にゴミ屋敷が発生した場合、解決は戸建てのケースよりも難しいと言われます。ゴミマンションの解決にはどのような方法があるのでしょうか。

専有部分への干渉はできない

マンション内のゴミ屋敷に対応しにくい理由の1つが、『専用使用権』が認められているためです。

マンションには、廊下や階段などのような、多くの人と使用を共有する『共用部分』と、居住者だけが使用できる『専用部分』に分かれています。そしてこの専用部分をどのように使うかは、基本的に個人の自由です。

専用が認められている居室やバルコニー、庭など置かれているものがたとえ大量のゴミだとしても、他人が口を出すのは難しいでしょう。

管理組合経由で交渉を行う

マンション内の部屋がゴミだらけになった場合、個人で話し合うよりもマンション管理組合を通して住人と交渉するのがベターでしょう。

管理組合とは、建物の共用部分や敷地を維持管理するために設立された組合です。分譲マンションなどでは『区分所有法』に基づいた設置が定められており、風紀・秩序・安全の維持に関する業務も一任されています。

ゴミ部屋問題が発生した場合は、速やかに管理組合に相談し、解決を図りましょう。通常、マンション内でトラブルが発生すれば、管理組合から管理人や管理会社に報告が上がり、何らかの手を打ってもらえるはずです。

法的手段に訴えることも検討

管理組合や管理会社が説得してもゴミが解消されない場合、法的手段に訴えることも検討しなければなりません。

しかし、既存の法律を根拠にゴミ屋敷を取り締まることは難しく、解決には専門家の助言と知識が必要になるでしょう。

ゴミ屋敷に法的措置を取る場合のポイントについて紹介します。

即時の改善や退去を命じることは難しい

現在、ゴミ屋敷を取り締まるための直接的な法律は存在しません。そのため、法律を根拠にゴミ屋敷状態の即時改善や退去を求めるのは困難でしょう。

ただし、分譲マンションの場合は『建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)』が法的措置の根拠となります。裁判を起こしても有利になるケースが多く、たとえ長期化しても、戸建てのゴミ屋敷よりは解決の糸口を見つけやすいかもしれません。

どの法律が適用できるか専門家に相談

マンション内のゴミ屋敷トラブルには区分所有法を根拠に対応できますが、どの事例にどの条項を用いるかはケース・バイ・ケースです。効果的に裁判を進めるために専門家の知識なくしては不可能なため、まずは弁護士に相談しましょう。

分譲マンションなど区分所有建物の場合、区分所有者全体の『共同利益』に違反する行為は、区分所有法により禁止されています。ゴミ屋敷を改善しない人がマンション全体の共同利益に反した場合、定められた『義務違反者に対する措置』に基づいて『行為の停止等の請求』『使用禁止の請求』『競売の請求』といった措置で対抗できる可能性があります。

ただし、法律を使ってどのようにトラブルを解決するかは、弁護士の手腕によるところが大きいといえます。迅速な解決のためには、マンショントラブルに強い弁護士を探し、対応してもらうのが一番でしょう。

まとめ

マンション内のゴミ屋敷は壁や床を共用していることから、周囲への悪影響も甚大です。しかし、扉を閉めれば内部の様子は外からわかりにくいため、近隣住民がゴミ状態を把握するのは難しいでしょう。

マンション内にゴミ屋敷があると、周辺の部屋にまで被害が広がるほか、資産価値も低下します。ゴミ屋敷を発見した際は速やかに管理組合に報告し、対応を求めるのがベターです。

分譲マンションの場合は区分所有法が定められているため、法的な対応も有効と考えられます。『ゴミマンション』と噂が立つ前に、毅然と対処してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次