汚部屋は衛生状態が悪いため、汚い期間が長いほど健康被害を受けやすくなります。また、汚れは心にも悪影響を与えるため、汚部屋では精神状態も不安定になりがちです。汚部屋によって受けるダメージと、汚部屋の脱出方法について解説します。
汚部屋の生活で起こる健康被害
ゴミが溜った汚部屋では行き届いた掃除ができず、不衛生になりがちです。また、生ゴミが散乱した汚部屋なら、カビや害虫の心配もあるでしょう。
このように悪辣な衛生状態を放置しておくことは、健康によいとはいえません。汚部屋を放置することで懸念される、健康被害をみてみましょう。
アレルギー症状
汚部屋に暮らしている人の中には、鼻炎や目のかゆみを訴える人が少なくありません。汚部屋では部屋に溜まったホコリやダニの死骸、害虫の糞といったアレルゲンが充満しているため、アレルギー症状を発症しやすくなります。
それまでアレルギーに悩まされたことのなかった人でも、汚部屋期間が長いほどアレルギー発症リスクは高まるでしょう。
また、皮膚に発疹ができたり気管支に異常が出たりといった症状も、アレルギー反応の1つと考えられます。症状が深刻化すると呼吸困難などを起こすこともあるため、非常に危険です。
害虫被害
放置しているゴミに、生ゴミのような『湿った物』が多ければ、ハエ、ダニ、ゴキブリなどの害虫が発生するでしょう。害虫は見た目が気持ち悪いだけではなく、人体にとって有害な菌やウィルスを媒介するため、注意が必要です。
特に、汚い家には必ずいるといわれるゴキブリは、『害虫の中の害虫』とも呼ばれます。繁殖力が強いうえ、毒性の高い菌・ウィルスを持つため、ゴキブリが大量に発生した汚部屋は非常に危険です。
ゴキブリの住む汚部屋では、常に食中毒、腸チフス、赤痢などの恐れがあり、さらにその糞は、アレルギーの原因ともなるでしょう。
ゴミによる怪我
あらゆる物がごちゃまぜに散乱している汚部屋なら、ゴミによる怪我にも注意が必要です。
汚部屋になるほど掃除をしない人なら、ゴミを分別したりまとめたりはしないでしょう。どこに何があるか分からなくなっているため、思いがけない場所に思いがけない物が落ちていることがあります。
なかでもガラスや缶、瓶などは、大けがのもとです。切った場所が悪かったり深かったりすれば、多量の出血や感染症となるかもしれません。
メンタルにも悪影響がある
汚部屋にいると気分が沈んだり、やる気がなくなったりする人は多いでしょう。汚部屋は身体だけではなく、精神にも悪影響を及ぼします。汚部屋が人のメンタルに及ぼす影響とは何なのでしょうか。
自己肯定感が下がる
汚部屋にいることは、絶えず『片付けできない自分』を突き付けられるということです。汚部屋に溢れるゴミを見る度に自己嫌悪に苛まれるため、解消できないストレスが溜まるでしょう。
毎日『自分は片付けが出来ない人間だ』『だらしない人間だ』と考え続ければ、自分の価値を感じられず、自分を受けいれられなくなります。この状態が長く続けば、やがては生きていく意欲を喪失する『セルフネグレクト』を発症するかもしれません。
孤独感やうつ傾向が高まる
汚部屋に暮らしていると、他人と関わることが少なくなります。
ほとんどの汚部屋の住民は、自分が汚部屋に住んでいることを知られたくないため、積極的に人を招きません。汚部屋化が進むほど人とのつながりが減少してしまうため、孤独は深まっていくでしょう。
また、汚部屋にいるだけで自己肯定感が下がる、というのは前述しました。常に憂鬱な気持ちを抱えて生活するため、不安定な精神状態が続きます。人と交われない孤独感や精神的な不安定さが合わさって、『うつ病』の発症リスクは高くなるでしょう。
物が多いことがストレスになる
汚部屋に散らかるゴミや衣類を見るだけで、精神的な負担が大きくなるというのはご存知でしょうか。
物が多い汚部屋では、常に多くの情報が目から脳に伝わります。目からだけではなく、匂い、感触といった五感から得る情報量は、通常の部屋より多いでしょう。こうした過剰な情報は脳を刺激し、疲れさせ、ストレスを与えます。
過剰なストレスは精神に大きな負荷をかけるため、汚部屋にいるだけなのに疲労を感じたり落ち込んだりと、精神的に不安定になるかもしれません。
病気が理由で片付けられない可能性もある
「汚部屋を片付けよう」というやる気はあるのに汚部屋化が進行する場合は、深刻な病気が隠れているのかもしれません。
どうしても部屋が片付けられない人、または片付けようとしても体が動かない人などは、発達障害や認知症、うつ病の疑いがあります。
病気と汚部屋化の進行は、どのように関わっているのでしょうか。
ADHDなど発達障害
ADHDは『Attention-Deficit Hyperactivity Disorder』の略で、日本語では『注意欠如・多動性障害』と訳されます。
症状としては『注意力散漫』『多動性』などがありますが、大人のADHDは、『ただのルーズな人』と混同されがちです。片付けできないことを責められたり、だらしないと文句を言われたりすることもあるでしょう。
しかし、ADHDの人は、性格や知能とは関係なく片付けできません。原因が『脳の神経伝達物質が安定して機能しないこと』にあるため、自分の努力で改善できるものではないのです。
ADHDが原因で片付け出来ない場合は、周囲の協力が必要になります。症状が深刻な場合は専門医のアドバイスが必要となるでしょう。
認知症
認知症とは、何らかの原因で認知機能が低下している状態を指します。認知症を発症すると、今までできた事が出来なくなったり、分からなくなったりして、今までと同じ生活は送れません。原因の多くは加齢によるものなので、汚部屋の主が高齢者なら、認知症を患っているケースが多いでしょう。
一般的な認知症の症状には、『記憶・機能・見当障害』、着替え方や道具の使い方が分からなくなるなどがあります。そのため、認知症を発症すると、汚部屋の掃除に不可欠な計画的な清掃や収納ができません。高齢者の場合は体力や気力も低下しているため、汚部屋化の進行を食い止めるのは困難でしょう。
うつ病など心理的な問題
心理的負担を抱えている場合、片付けに必要なやる気が出ません。心にトラブルがある人は無気力になりやすく、体を動かすこともつらいと感じるのです。
また、「他のことでは体が動くけれど、片付けをしようとすると疲労感に襲われる」という人は、『非定型うつ病』の可能性があります。これは近年よくみられるうつ病で、好きな事はできるけれど、苦手な事・嫌な事には体が動かなくなるのが特徴です。
調子のよい時は至って普通なため「ただのわがまま」と誤解されやすい病気ですが、嫌な事を前にした時の疲労感や不安は強烈です。一度片付けが嫌だと感じれば、体は全く動かなくなるでしょう。
汚部屋を片付けるキッカケをつくる
すでに汚部屋化してしまった部屋を綺麗にするのは、容易なことではありません。しかし、汚部屋に住むことによって受ける肉体・精神的リスクを知れば、なんとかしなければと思う人は多いでしょう。
汚部屋を「なんとかしたい」と思った人は、自分で汚部屋脱出のきっかけを作る必要があります。小さなことでも始めてみれば、突破口が開けるかもしれません。
いらないものを捨ててみる
汚部屋を片付けるには、部屋を占拠する多くの不用品を捨てることから始めましょう。この時、ペットボトルや空き箱といった『明らかなゴミ』から処分していくと、迷いなく作業を進められます。
めぼしいゴミを捨て終われば、次はその他のものを『要・不要』に仕分け、処理します。長期間使っていなかった物、存在さえ忘れていたような物があれば、ためらわず不用品として処理してください。
こうして必要なものだけを残せば、部屋はかなりすっきりし、片付けたという達成感を得られるでしょう。
友達を家に招く
友達に「家に来て」と言えば、片付けせざるを得ません。どうしてもやる気が起こらないなら、『片付けしなければならない状況』に自分を追い込んでみるとよいでしょう。
友達に汚部屋を見られたくない、知られたくない、という気持ちは、片付けの大きなモチベーションとなります。片付けなかったら軽蔑されるかも、付き合いをやめられるかも、という危機感を感じれば、「やる気がでない」と言い訳できません。
また、友達の訪問日を『〇月〇日』と指定すれば、その日が片付けのタイムリミットです。面倒、やりたくないと考える間もなく、「どうすれば片付けが終わるか」を具体的に考えるようになるでしょう。
再び汚部屋化してしまうとどうなる?
汚部屋が1度綺麗になっても、それで終わりではありません。気を抜くとすぐにリバウンドしてしまうため、継続的な努力が必要です。
万が一リバウンドして汚部屋化した場合、受けるダメージは大きいと考えられます。汚部屋にリバウンドすると、どんなデメリットがあるのでしょうか。
自己嫌悪が深まる
部屋が再び汚部屋化すると、『片付けられなかった』という現実に打ちのめされます。「自分はやっぱりダメなんだ」と自己嫌悪が深まり、精神的なストレスが増加するかもしれません。
「頑張って片付けたのに、また汚くなった」と考えれば、自分のふがいなさやだらしなさに落ち込んでしまうでしょう。
掃除がさらに苦手になる
一度は汚部屋脱出に成功したのに、また汚部屋化したという事実は、掃除の苦手意識を高めます。
『綺麗にしたのに、また汚部屋化してしまった』という経験が、片付けを無意味に感じさせるのです。片付けなければという意識が働いても、汚部屋に逆戻りしたという事実が思い出されるため、片付けに消極的になってしまうでしょう。
掃除習慣の作り方
部屋が汚部屋にならないようにするには、掃除の習慣を身に着けることが重要です。日々の掃除や物の管理を徹底すれば、汚部屋になりにくい部屋となるでしょう。また、部屋に人を入れる機会が多ければ、部屋を綺麗にするモチベーションにもなります。
汚部屋化を食い止めるため、どのように掃除習慣をつければよいのでしょうか。
こまめに掃除をする
こまめな掃除は、汚れが溜まるのを食い止めます。
部屋の汚れが小さいうちは、掃除や片づけにさほど手間はかかりません。ところが汚れが大きくなると、それを解消するにはより多くの手間や時間がかかります。片付けしないから汚れが溜まる、汚れが酷いから片付けしないという悪循環が生まれ、汚部屋化は一気に進行するでしょう。
この悪循環を防ぐ有効手段が、こまめな掃除です。無理な計画は長続きしないため、一日数分だけ、数日置き、など負担の少ない方法をおすすめします。
定期的に掃除すれば、やがては掃除が習慣化します。掃除が当たり前になれば苦痛も苦労も感じずに、綺麗な部屋を維持できるでしょう。
物を減らす
汚部屋化を防ぐ有効手段の1つが、物を減らすことです。物が多いと収納しきれなくなり、置きっぱなしや出しっぱなしが増えてしまいます。すぐに片付ければ良いですが、放置すれば、すぐに汚部屋になってしまうでしょう。
収納できない物が増えた、どこに収納したらよいかわからないなど感じたら、今ある物の再チェックが必要です。現在必要ない物は処分し、本当に使う物だけを残しましょう。
また、片付けやすい部屋にするには、部屋にある物の全体量を調整しなければなりません。そのためには、物を捨てることと共に、『物を部屋に入れない』ことも重要です。安いから、お得だからと安易に物を購入せず、部屋に入れる物はしっかり吟味して選びましょう。
定期的に人を招く
人を招くと片付けしようという気分になる、というのは前述しました。綺麗な部屋をキープするなら、定期的に人を招くとよいでしょう。
人を部屋に招くメリットは、片付けに気合が入る、片付けのリミットが決まり、具体的な片付け方を考えるようになる、などです。
定期的に人を招けば、その度に部屋は綺麗な状態に戻ります。たくさんの人を招けば交友関係が広がり、孤独を感じることもありません。いつでも人を呼べる部屋をキープすれば、生活そのものが快適になるでしょう。
まとめ
衛生状態の悪い汚部屋に暮らすと、アレルギーや害虫被害が懸念されます。害虫は見た目も不快なため、目にするだけで気分が落ち込むでしょう。
また、部屋の汚さは、住む人の精神をも蝕みます。ゴミに囲まれた暮らしを続ければ、うつ病やセルフネグレクトにまで発展してしまうかもしれません。
ただし、病気などで片付けできない時は、1人での解決は困難です。おかしいと感じらたら、専門医に相談をおすすめします。
また、どうしてもやる気が出ない人は、目に付くゴミを捨てたり、思い切って汚部屋に人を招待するという方法も有効です。「汚部屋にはデメリットしかない」と承知して、1日も早く不健康な汚部屋から脱出しましょう。