ゴミ屋敷が増えたことに伴い、ゴミ屋敷対策条例を設ける自治体も増加しています。なぜ自治体での対策が必要なのか、現状の法律や、民間での対応は難しい点などを紹介します。また、実際にゴミ屋敷ができてしまったときの対応も見ていきます。
ゴミ屋敷対策条例を制定する自治体が増加
ゴミ屋敷対策条例は、自治体ごとに設定されています。最近ではゴミ屋敷が社会問題化し、個別に条例を作る地域も増えました。
現行の法律では対処が難しいため、個別の条例で対応していることが現状です。過去にはゴミ屋敷を禁止する法案が提出されたこともありますが制定にはいたっておらず、内容については議論の余地があるようです。
ゴミ屋敷に対処するには、まず自治体側の制度を調べましょう。
ゴミ屋敷の増加が社会問題に
近年ゴミ屋敷が増加したことで、社会問題になっています。火災や近隣とのトラブルも報告され、ニュースになっていることも多いため、知っている人も多いのではないでしょうか。
ゴミ屋敷は、存在するだけで地域の迷惑になります。近所に住んでいると、異臭の被害や火災の心配があります。
ニオイが届かないような場所でも、景観の悪化で土地価格の下落や不法投棄を誘発するなど地域環境を悪くさせる事態が起こります。
現在の法律では対処が困難
現在、ゴミ屋敷をすぐに摘発する方法はありません。ゴミであっても敷地の中にある以上は、住人の私有物という扱いです。
ゴミを捨てたくないと住人が拒否するなら、とりあえずは引き下がるしかありません。ゴミを捨ててもらうよう依頼はできますが、他人が勝手に処分できないため、根気よく働きかけるしかありません。
ただし、自治体で何らかの条例を作っていれば対処は可能です。地域の迷惑になるようなゴミ屋敷の場合、自治体の権限で勧告するなど対処してもらえます。
しかし、期限を設けて何度指導しても従ってもらえない場合は、自治体による強制執行が可能です。
禁止法案が衆院に提出されたこともある
『ごみ屋敷禁止法案」が衆院に提出されたこともあります。2014年に野党が提出したものですが、その時点では成立には至りませんでした。
しかしゴミ屋敷が社会問題化するにつれて、さまざまな場所で議論されるようになってきています。
行政のゴミ屋敷への対応例
ゴミ屋敷に対して行政が実際に強制的に働きかけている事例もあります。たとえば足立区では初めてゴミ屋敷対策条例が生まれ、京都市では行政代執行も行われました。
ゴミ屋敷対策条例は横浜市などにも広がり、制定する自治体が増え続けています。
足立区で初のゴミ屋敷対策条例が制定
足立区では、ゴミ屋敷に対する相談窓口を設けています。2012年には『足立区生活環境の保全に関する条例』も制定され、ゴミ屋敷があることを報告すれば、調査や指導が可能です。何度話しても改善が見られないと判断されれば、最悪の場合、行政代執行が行われます。
また、空き地の草刈なども有料で請け負っており、適切に土地が管理できるようサポートして欲しい人が相談することも可能です。
京都市で全国初の行政代執行が実施
京都市では2015年、右京区にあるゴミ屋敷に対して、全国で初めて行政代執行を行いました。
それまで条例が制定されている都市でも、ゴミの処分までは行われておらず、自治体では改善が難しい印象を払拭した形です。京都市で行政代執行が行われてからは、名古屋や福島などでも強制的にゴミの処分が実施されています。
ただし、行政代執行が行われるまでには、かなり長い時間を費やしました。
横浜市など、条例制定の動きが広がる
横浜市などでも、2016年に条例が制定されています。単にゴミを片付けるだけでなく、ゴミ屋敷にしてしまった住人に寄り添いながら、根本的な解決を目指す条例です。
屋外にゴミが散乱し、ニオイの問題や火災発生のリスクが高まっているなど、身近な場所で問題が起きたときは、まず相談してみましょう。
全国でもゴミ屋敷を解決するための条例が増えており、いかに問題視されているかがわかります。
民間でゴミ屋敷に対抗する方法は?
民間でゴミ屋敷に対応するには、まだまだ大きな問題があります。前提として私有地にある物は勝手に処分できません。
マンションであっても、専有部と認められる場所なら処分は難しいでしょう。もし処分できたとしても、所有者と揉め事が起きるリスクがあります。
私有地にある物を勝手に処分できない
私有地には、自由に物を置いて構わないことになっています。たとえゴミであっても同じです。ゴミかどうかの判断は、基本的に本人に任されることも理由です。所有者が必要な物と判断しているなら、処分はできません。
たとえば、親にとってゴミと思えるような石ころでも子供にとっては宝物である可能性も考えられます。このように、本人の主張によって明らかなゴミや廃棄物でも、依頼することが難しいのです。
マンションでも専有部のゴミ撤去は困難
マンションでも部屋の中にゴミを溜めているなら、勝手に捨てることはできません。ベランダなどの専有部も撤去できない部分です。
階段や外においているものなら処分できる可能性もありますが、そちらも勝手に捨ててしまうと問題です。自分の物ではないため、民間が勝手に手出しをするとゴミの所有者から訴えられる可能性も考えられます。
揉め事が起きるリスクがある
ゴミかどうかはともかく、他人が自分の家の物を勝手に処分すれば誰でもいい気はおきません。特にゴミ屋敷に暮らしている人は、ゴミを溜めていることを悪いと感じていないケースがあります。好きでゴミを拾ってきているような人は、ゴミ処分することをありがたいとは感じません。
逆に、なぜ処分したのか問い詰められることもあるでしょう。相手が逆上してしまうと、新たな揉め事になりトラブルになってしまいます。
ゴミ屋敷に対処するには、なるべく自治体など公的な機関の力を借りることがおすすめです。
近所にゴミ屋敷ができたらどうする?
近所にゴミ屋敷ができてしまったら、早めに対策が必要です。まずは自治体に相談しましょう。
地域の問題であることを近隣住民全員が把握して、定期的に働きかけることが大切です。自治体に相談しても、調査や指導には時間がかかりますので、危険に感じることがあったらすぐに自治体に申し入れましょう。
なるべく早期に解決できるよう、住民全体が気を配っていくことが必要です。
自治体に対応を相談
ゴミ屋敷が見つかった時点で、最初に自治体へ相談しましょう。自治体では、ゴミ屋敷対策に関する条例を定めていることがあるためです。たとえ、細かい条例を定めていなくても、地域住民のが快適に暮らせるよう対応はしてくれます。
対応窓口が決まっている場合はまず、窓口へ相談します。ゴミ屋敷に関する窓口がわからない場合は、住まいや街づくりに関する担当部署に相談しましょう。
地域の問題として解決に取り組む
単に近くの家がゴミ屋敷になって迷惑というスタンスではなく、地域全体の問題として取り組むと解決もしやすいでしょう。
地域全体の問題であればかかわる人も多く、議論や対策もしやすいためです。自治体の力を借りれば、ゴミ処分へ働きかけてもらえるでしょう。
ただし、条例が制定されていない場合もあり、すぐに対処してもらえると期待するのはやめたほうがいいでしょう。また、住人の意識が変わらなければ、せっかく解消しても元に戻ってしまうケースもあり、周囲の見回りや挨拶などのサポートも大切です。
まとめ
さまざまな自治体が、ゴミ屋敷に対する条例を設けています。ゴミ屋敷は社会問題化し、どんどん増えているためです。
高齢化で体の自由が利かなくなり、ますます掃除やゴミ捨てが難しくなることを考えると、今後も増加する可能性があります。
また、近くにゴミ屋敷がある場合は、早めに自治体へ相談しましょう。