遺品整理業には特に必要な資格はありません。しかし、顧客に信頼性をアピールしたり、事業展開の幅を広げたりするには、いくつかの資格を所持しておく方が有益でしょう。遺品整理業を営むにあたり所持しておきたい資格と、開業のコツを紹介します。


遺品整理業者の事業スタイル

遺品整理業は、今後ますます需要が高まると予想される分野です。これから開業しようと考える人は、どのようなスタイルを取るかを決めておかねばなりません。

遺品整理業の需要が高まると考えられる背景と、2つの事業スタイルについて紹介します。

高齢化の進行で遺品整理の需要が増加

家族の遺品整理や片付けをプロの遺品整理業者に依頼するケースは、年々増えています。

2035年には日本人の3人に1人が65歳以上になると推測されているなか、高齢者だけの世帯や独居老人が増加中です。家族がいても遠く離れていたり、交流が無かったりすれば、亡くなった後の遺品整理や片付けが困難という家庭は多いでしょう。

現在、高齢者を介護する施設やサービスは増え続けていますが、高齢者の死後、残された家族を助ける遺品整理業も、ますます充実していくと考えられます。

独立開業とフランチャイズ契約

遺品整理業を開業する場合、個人経営の『独立開業』か、大手企業の名を借りる『フランチャイズ契約』かを選ばねばなりません

独立して遺品整理業を始めるメリットとしては、収入は丸ごと自社の利益にできる、少ない資金で開業できるなどがあります。ただし、ゼロからのスタートとなるため、客を集めるにはそれなりの営業努力が必要となるでしょう。

一方、大手業者とフランチャイズ契約を結んで開業した場合、大手の名前で集客できるというメリットがあります。とはいえ、開業時にはまとまった加盟費を支払ったり、毎月フランチャイズ費を本社に支払ったりせねばならないため、それなりの金額を稼がなければ、利益を上げるのは難しいかもしれません。

どちらのスタイルにもメリット・デメリットがあるため、開業前に十分に検討することをおすすめします。

遺品整理業開業にかかる費用

遺品整理業者として開業する際は、独立かフランチャイズでかかる費用が異なります。それぞれを選択した場合にかかる費用について詳しく見てみましょう。

独立開業の場合にかかる費用例

大手に加わらず個人で独立して開業する場合、かかる費用はケース・バイ・ケースです。開業時には設備費、備品費などが必要となるうえ、店舗を構える場合は物件費も必要になります。

また、開業後すぐにお金が入ってくるわけではないため、ビジネスを動かすための運転資金も用意しておかねばなりません。万が一のことを考えた予備費の準備も必要なため、それなりの金額が必要となるでしょう。

実際に開業した人を見ると、資格取得費用や遺品運搬用の車両代、宣伝費などを含め、100~300万円を元手にスタートする人が多いようです。

フランチャイズは別途契約費用がかかる

個人ではなく大手のフランチャイズとして開業する場合は、前述した諸費用にプラスして、本社に支払う加盟費や研修費が必要となります。

支払う金額は企業やフランチャイズ方式によって異なるため一概には言えませんが、某大手遺品整理チェーンの場合は、独立起業フランチャイズなら70万円、ハブ機能フランチャイズなら250万円を支払わねばならないそうです。

さらに、フランチャイズとして開業した後は、毎月のロイヤリティが発生します。こちらも企業によっては定額制だったり『売上の〇%』だったりとルールは様々ですが、『固定費』として毎月支払わねばなりません。

特殊清掃を行う場合は専用機材が必要

遺品の整理だけではなく特殊清掃もサービスに含める場合は、専用の機材を揃えなければなりません。

特殊清掃とは消臭・除菌・害虫駆除等を行う、専門的な清掃業です。部屋の状態が悪い場合は遺品整理や不用品の買取と併せて特殊清掃を希望する人が多く、需要は高まっていると言えるでしょう。

特殊清掃には、オゾン脱臭機や消臭用の専門薬剤等が必要となります。いずれも金額は高価ですが、高性能な機材を持っているか否かは、特殊清掃業者にとって重要なポイントです。ケチらず良い物を購入しておけば良いアピールポイントとなり、顧客の増加も見込めるでしょう。

必要な資格と取り方、難易度は?

遺品整理を行うだけなら特に資格は必要ありません。しかし、様々な資格を提示することで「この業者は安心できる、信頼できる」と判断する顧客も多いでしょう。

遺品整理業で利益を上げるには、遺品整理に関連したサービスも提供できるよう、必要な資格を取得しておく方がスムーズなのです。遺品整理業を開業するにあたり、取っておきたい資格と難易度について紹介します。

遺品整理士、遺品供養士

遺品整理士とは、遺品を適切に仕分けるための知識を持った人を指します。一方遺品供養士とは、遺品を宗教や状況に合わせて供養できる知識を持つ人です。こうした資格を所有していれば、顧客に『遺品整理のプロ』という印象を与えやすくなるでしょう。

遺品整理士の資格を取得するには、『遺品整理士認定協会』が催している講座受け、認定検定に合格しなければなりません。

また、遺品供養士に関しては『一般社団法人遺品供養カルチャー協会』の講習と遺品供養士検定が必要です。いずれも受講料・検定料併せて2~3万円程度ですが、遺品供養士の場合は、上のランクほど費用が高額になります。それぞれを比較すると、2級は約1万7000円、1級は約4万円、コンシェルジュになると約17万円もの費用が必要です。

一般廃棄物収集運搬許可

遺品整理で出るゴミや不用品を集め、処分場まで運搬する際必要になるのが『一般廃棄物収集運搬許可』です。資格取得には管轄の市区町村の役所に必要書類を提出し、手数料を支払わねばなりません。

ただし、廃棄物処理法第7条第5項中には『市区町村による一般廃棄物の運搬収集が困難でなければ許可できない』と記載されており、実際に許可を得るのは難しいです。取得申請さえ受けてくれない自治体もあるため、まずは事前に問い合わせてみることをおすすめします。

古物商許可

有価値の遺品を買い取る際に必要となるのが『古物商許可』です。遺品整理を生業とするなら、買取まで行える資格も所持しておいた方が事業展開しやすく、顧客も集まりやすくなるでしょう。

資格取得の際の窓口となるのは、営業所を管轄する警察署です。申請時には決められた様式の書類に記入すること、手数料1万9000円が必要となるので、準備しておきましょう。

会社起業時に活用できる制度

遺品整理会社を起業する際は、補助金や助成金を活用できます。開業する際はこうした制度についてもきちんと把握し、漏れなく受け取れるようにしておくことをおすすめします。

創業補助金

新たな需要や雇用の創出等を促し、日本経済を活性化させることを目的に作られたのが『創業補助金』です。補助金を受けることができれば、起業の際必要になる経費の1部を最大で200万円までカバーできます。

ただし、これは誰でも受けられるというわけではなく、自身の遺品整理業に独創性や実現可能性があることをアピールし、認められなければなりません。

また、たとえ認められてもさらに報告書や必要書類を提出や検査が待っています。補助金を受け取るまでには時間がかかるため、補助金をあてにせず、自己資金も潤沢に用意しておく必要があるでしょう。

事業者向け助成金

条件さえ満たしていれば必ず受けられるのが事業者向けの助成金です。一般的には厚生労働省所管で取り扱われ、その種類は50以上もあります。

遺品整理業で利用できそうなものは、以下で確認してください。

  • 地域再生中小企業助成金
  • 受給資格者創業支援助成金
  • トライアル雇用奨励金

助成金は、雇用に関するものがほとんどです。そのため従業員ゼロで事業展開する際は交付されません。助成金を受けるには、最低1人でも従業員を雇わねばならないでしょう。

補助金や助成金の探し方

補助金や助成金は新たに作られたり廃止されたりと動きが激しいため、都度「どんな補助金や助成金があるか」は確認しなければなりません。利用できそうなものを探すには、厚生労働省や自治体のホームページをチェックするとよいでしょう。

また、このほかにも、『独立行政法人 中小企業基盤整備機構』が運営している『J-Net2』の『支援情報ヘッドライン(旧資金調達ナビ)』や中小企業・小規模事業者をサポートするために開設された『ミラサポ』でも開業時に有益な補助金や助成金の情報を得られるので、確認するとよいでしょう。

まとめ

遺品整理業は、今後需要が高まるとみられる業種です。新たに開業を考えている人は、事業スタイルや必要な資格等を考慮し、準備を整えて進めましょう。

また、起業時には国や自治体から補助金や助成金を受けられるかもしれません。条件がそろっているならきちんと申請し、開業にかかる経費を抑えましょう。