人が亡くなられてから発見されるまでの「死後何日」が経過したかによって、特殊清掃の必要性や内容は大きく変わります。特に孤独死などで発見が遅れると、体液や臭い、害虫の発生などが起こり、通常の掃除では対応できなくなります。
本記事では、死後経過日数ごとに室内で何が起きるのか、特殊清掃が必要になるタイミングや費用の目安、依頼の流れなどをわかりやすく解説いたします。
特殊清掃が必要になる理由と背景

人が亡くなった部屋では、体液や腐敗臭が広がるなど、通常の掃除では対応できない深刻な状態になることがあります。とくに発見までに時間がかかると、衛生的にも危険な状況になります。こうしたケースでは、専門の技術と機材を持つ「特殊清掃業者」に依頼する必要があります。
なぜ特殊清掃が必要?通常の清掃との違いとは
人が亡くなった現場では、時間が経つにつれて体液や血液が床や壁に染み込み、腐敗臭や害虫の発生などが起こります。このような状態では、一般的な清掃では汚れを取り除けず、衛生的にも大きなリスクがあります。特殊清掃では、専用の薬剤や機械を使って、除菌・消臭・害虫駆除などを徹底的に行います。
たとえば、床の張り替えや壁の解体・再施工なども必要になることがあります。また、感染症への配慮や、遺族の精神的ショックを和らげるための対応も含まれます。通常の清掃とは違い、建物の構造部分まで対処することが多いため、専門知識と高度な技術が求められます。そのため、特殊清掃は専門業者に依頼する必要があるのです。
孤独死・事件・事故死など典型的な発生事例
特殊清掃が必要となる場面には、孤独死・事件・事故・自殺などがあります。中でも孤独死は、死後の発見が数日から数週間遅れるケースが多く、その間に体液や腐敗臭が部屋中に広がってしまいます。フローリングや畳に体液が染み込み、悪臭や細菌、ウジなどの害虫が発生することも珍しくありません。
事件や自殺の現場では、血液が壁や天井まで飛び散っていたり、家具に痕跡が残っていたりして、通常の清掃では対処できません。事故死でも、倒れてその場で亡くなった場合には血液や嘔吐物が残り、感染症リスクも高まります。このように、通常の清掃では対処できない複雑で危険な状態のため、特殊清掃が必要になるのです。遺族の精神的負担軽減のためにも専門業者の対応が不可欠です。
死後経過日数ごとの室内変化と清掃目安

人が亡くなってからの経過日数によって、部屋の状態や清掃に必要な作業の内容は大きく変わります。ここでは、死後1〜3日、4日〜2週間、そして3週間以上経過した場合の室内状況と、それぞれに必要な特殊清掃の対応についてご説明いたします。
死後1~3日で起こることと清掃の可否
死後1〜3日の間であっても、季節や室内の温度によっては腐敗が始まり、体液が漏れ出すことがあります。特に夏場など気温が高いと腐敗の進行は早く、数日以内でも臭いや害虫の発生が確認されることもあります。この段階で発見されれば、状況によっては特殊清掃を行わずに済む場合もありますが、完全に清潔な状態に戻すためには専門業者の対応が望ましいです。
早期発見の場合でも、除菌・消臭作業が必要になることがあり、床や寝具に体液が染み込んでいると、内部構造の洗浄や張り替えが必要になることもあります。また、見た目では分からない腐敗の進行もあるため、専門知識を持つ業者による現地確認が安心です。したがって、死後数日であっても自己判断での清掃は避け、状況に応じて特殊清掃の検討が必要です。
死後4日~2週間で必要になる特殊対応とは
死後4日を超えると、腐敗が進行し体液が床下まで染み込んでしまうことがあります。また、死臭が室内に充満し、ウジやハエといった害虫が発生するケースも増えてきます。このような状況になると、通常の掃除では対応できず、専門的な特殊清掃が必要です。特殊清掃では、汚染部分の床材や壁紙を取り除いたうえで、専用の薬剤を使って除菌・消臭作業を行います。
さらに、害虫駆除や消臭機器の設置など、複数工程にわたる作業が必要になるのが一般的です。室内に残った臭いは、家具や天井裏、換気口などにも染みつくため、徹底的な作業が求められます。この段階での清掃は作業量も増えるため、費用も高くなりやすく、迅速な対応が重要になります。
死後3週間以上放置された場合の清掃の実情
死後3週間以上が経過すると、室内の状況はかなり深刻になります。腐敗が進み、体液は床材だけでなく、床下の構造部分や壁の内部にまで広がることが多くあります。さらに、強烈な腐敗臭や害虫の大量発生により、健康被害が懸念されるほどの状態になることもあります。このレベルになると、清掃だけでなくリフォームに近い工事が必要になる場合もあります。
たとえば、床板の撤去や下地の消毒、断熱材の交換、天井や壁の張り替えなどが必要になることもあります。また、建物全体に臭いが広がっている場合は、オゾン脱臭機などの特殊機材を用いた消臭作業も行われます。このような状況では、清掃だけでなく、専門業者による包括的な対応が不可欠です。
特殊清掃の費用と日数による影響

特殊清掃にかかる費用は、清掃内容や部屋の状態、そして死後の経過日数によって大きく異なります。ここでは、基本的な料金の目安と追加費用の内訳、さらに費用に影響する要因や業者選びのポイントについて解説いたします。
基本料金の相場と追加費用の内訳
特殊清掃の基本料金は、作業内容によって異なりますが、ワンルームの場合でおおよそ5万円〜15万円程度が相場です。これには、体液の除去、汚染部分の清掃、消臭・除菌などの基本作業が含まれます。ただし、床や壁の張り替えが必要な場合や、汚染が広範囲に及ぶ場合には追加費用が発生します。たとえば、害虫駆除やオゾン脱臭機の使用、汚れた家財道具の搬出・処分費用などが追加されることがあります。
また、遠方への出張費や夜間作業料金がかかる場合もあるため、見積もり時にしっかりと内訳を確認することが大切です。さらに、作業後に原状回復が必要な場合は、別途リフォーム費用も加算されることがあります。料金は一律ではなく、状況ごとに大きく異なるため、複数業者に相談するのが安心です。
死後の経過日数や部屋の状況が費用に与える影響
死後の経過日数が長くなるほど、特殊清掃にかかる費用は高くなる傾向があります。たとえば、死後1〜3日以内に発見された場合は比較的軽度な清掃で済むこともありますが、1週間を超えると腐敗が進行し、床下や壁の内部まで汚染が広がるケースも多くなります。その結果、清掃にかかる作業時間が増え、除去すべき範囲が広がるため、費用も高額になります。
また、季節や室内の換気状況によっても腐敗の進行速度は変わるため、同じ日数でも費用に差が出ることがあります。さらに、家具や家電が多い部屋では搬出作業にも時間がかかり、処分費用も追加されます。このように、清掃費用は「死後の日数」と「現場の状況」に大きく左右されるため、早めの発見と対応が重要です。
高額トラブルを防ぐための業者選びのコツ
特殊清掃の業者選びを間違えると、想定以上の高額請求や不十分な清掃でトラブルになることがあります。こうした事態を避けるためには、まず「遺品整理士認定協会」などの公的な団体に加盟している業者かどうかを確認しましょう。
また、現地での見積もりを行い、作業内容や追加費用の可能性について詳しく説明してくれるかも重要なポイントです。極端に安い料金を提示する業者は、後から高額な追加請求をするケースもあるため注意が必要です。さらに、ホームページや口コミで過去の実績や対応力を確認することで、信頼性を見極めることができます。不安な場合は、複数社から見積もりを取り比較検討することで、安心して任せられる業者を選ぶことができます。
特殊清掃の依頼から完了までの流れ

特殊清掃は、依頼から作業完了までにいくつかの重要なステップがあります。遺族や管理者がスムーズに対応できるよう、事前に知っておくべき準備内容や作業の流れ、作業後に必要な確認事項についてご紹介します。
依頼前に必要な準備と届け出について
特殊清掃を依頼する前に、まず現場の状況を落ち着いて確認し、警察や医師による確認が済んでいるかを確認しましょう。遺体が見つかった現場では、法律に基づく届け出や処理が必要になるため、必ず警察や自治体の指示に従ってください。清掃業者への依頼は、遺体搬送が完了し、警察から立ち入り許可が出た後に行うのが一般的です。
また、遺品の中で重要なもの(貴重品や書類など)がある場合は、清掃前に取り分けておくと安心です。業者に連絡する際は、現場の広さや間取り、発見までの日数、汚れの状況などをできるだけ詳しく伝えることで、正確な見積もりや準備が可能になります。事前の情報共有が、スムーズな作業の第一歩となります。
作業当日の流れと所要時間の目安
特殊清掃の当日は、まず作業員が現地に到着後、再度状況を確認し、作業内容と段取りを説明してくれます。その後、汚染物の除去や体液の清掃、消毒・消臭などの工程に入ります。作業は、腐敗の程度や部屋の広さによって異なりますが、ワンルームであれば数時間〜1日程度、汚染が重度であれば2〜3日以上かかることもあります。
害虫駆除やオゾン脱臭機の設置などが必要な場合には、さらに時間が延びることがあります。作業中は立ち入りを制限されることが多いため、事前に必要なものを取り出しておくとよいでしょう。作業完了後は、現場の確認と立ち会いを求められるため、依頼者も最終チェックに参加することが望ましいです。
清掃後に行うべき確認と原状回復の対応
特殊清掃が完了したら、依頼者は現場の最終確認を行う必要があります。消臭・除菌が適切に行われているか、汚染部分の除去が十分かを目視で確認し、不安があればその場で業者に相談してください。また、床や壁の取り替えが行われた場合は、作業後の状況を写真で残しておくと、後日のトラブル防止に役立ちます。
賃貸物件の場合は、原状回復義務の範囲も確認しておく必要があります。大家や管理会社に連絡し、必要に応じてリフォームの手配や費用負担の確認をしましょう。一部の特殊清掃業者では、原状回復やリフォームまで一括で対応してくれる場合もあります。清掃後の確認とあわせて、次のステップに進むための準備を整えることが大切です。
清掃後に必要な対応と心の整理

特殊清掃が終わった後も、遺族には多くの対応や心のケアが求められます。衛生面を保つための処置や、遺品の整理、そして精神的な負担を少しでも軽くする工夫など、清掃後に取り組むべきポイントをご紹介いたします。
消臭・除菌・害虫対策の必要性
特殊清掃が終わっても、消臭や除菌、害虫対策はそのままにしてはいけません。死後の腐敗臭は、壁や床の素材に染み込んでいることが多く、通常の消臭スプレーでは取りきれないことがあります。また、体液の成分が床下にまで入り込んでいた場合、そこから菌が繁殖する可能性もあるため、徹底した除菌が必要です。
さらに、ウジやハエといった害虫が発生している場合、完全に駆除しなければ再発する危険性があります。特殊清掃業者では、オゾン脱臭機や専用薬剤を使用し、目に見えない部分までしっかり対処してくれます。安全で衛生的な状態を維持するためにも、こうした作業は一時的な対応で終わらせず、必要に応じて数日後に再確認することも重要です。
遺品整理の方法と注意すべき点
遺品整理は、故人を偲ぶ大切な作業ですが、同時に大きな負担も伴います。まずは形見として残したいものや貴重品、書類などを分けて保管しましょう。腐敗や体液によって汚れてしまった遺品は、衛生面の観点から無理に保管せず、業者に相談して処分してもらうのが安全です。
また、自治体によっては処分方法が異なるため、地域のルールも確認しておく必要があります。信頼できる遺品整理業者に依頼することで、遺族が直接手を触れずに整理を進めることができ、心身の負担を軽減できます。作業中に感情があふれてしまう方も少なくありませんので、無理せず第三者に任せる判断も有効です。さらに、遺品の中に現金や通帳、権利書などが見つかることもあるため、処分前にしっかりと確認作業を行うことが大切です。
遺族の精神的負担を軽減する支援策
突然の死や孤独死に直面した遺族は、精神的に大きなショックを受けます。特殊清掃や遺品整理の現場に立ち会うこと自体が心の負担になることもあります。こうした場面では、清掃業者が心理的な配慮をしながら作業を進めてくれるかどうかも重要です。
また、自治体やNPO法人では、グリーフケア(死別の悲しみに向き合う支援)を行っている窓口があります。カウンセラーによる相談や、遺族同士が語り合える場を提供している地域もあるため、一人で抱え込まず支援を受けることが大切です。無理をせず、心が落ち着いたときにゆっくりと向き合うことが、心の整理にもつながります。身近な人や専門機関に頼ることは、決して弱さではなく大切な行動です。
まとめ
特殊清掃が必要になるかどうかは、亡くなられてから発見されるまでの「死後何日」が大きく関係します。たとえ数日であっても、室内の温度や湿度によっては腐敗が進み、体液や臭い、害虫などが発生することがあります。日数が長引くほど部屋の汚染も深刻になり、清掃費用も高額になる傾向があります。そのため、早期の対応が重要です。
また、特殊清掃後には消臭や除菌、遺品整理などの作業も必要となるため、信頼できる業者に相談しながら慎重に進めていくことが大切です。精神的にも負担の大きい状況だからこそ、ひとりで抱え込まず、専門家の力を借りて冷静に対処していきましょう。