特殊清掃とは、孤独死や事故死などがあった現場を専門的に清掃・消毒する作業のことです。発生すると高額な費用がかかる場合があり、「誰が払うのか」「払えないときはどうするのか」と悩まれる方も多いです。
本記事では、費用の支払い義務がある人や費用相場、保険の活用法、費用を抑える予防策まで、わかりやすくご説明いたします。
特殊清掃費用の支払い義務が発生する人とは

特殊清掃にかかる費用は、亡くなった方との関係性や契約内容によって支払い義務が発生する人が異なります。
連帯保証人が費用を負担するケース
結論から申し上げますと、連帯保証人には特殊清掃費用の支払い義務が発生する可能性があります。なぜなら、連帯保証人は契約者と同じ立場で責任を負うためです。
たとえば賃貸契約で入居者が亡くなり、その部屋が特殊清掃を必要とする状態になった場合、大家さんは連帯保証人に費用を請求することがあります。ただし、契約内容や損害の範囲によっては支払い義務が限定される場合もあります。
したがって、連帯保証人になっている場合は、事前に契約書を確認しておくことが大切です。予期しない費用負担を防ぐためにも、契約時に責任の範囲を明確にしておくことが重要です。
法定相続人に支払い義務がある場合
法定相続人には、原則として特殊清掃費用の支払い義務が発生することがあります。なぜなら、相続人は亡くなった方の財産とともに負債も引き継ぐためです。
たとえば、清掃費用や原状回復費用が発生している場合、その支払いは相続人が行う必要があります。ただし、相続放棄をすることで支払い義務を回避することも可能です。相続放棄には期限があるため、早めに家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
清掃費用が高額になるケースもあるため、遺品整理や特殊清掃が必要になった場合は、相続するか放棄するかを慎重に判断しましょう。
物件の所有者に費用負担が求められるケース
物件の所有者、つまり大家さんや管理会社が特殊清掃費用を負担するケースもあります。これは、亡くなった方に身寄りがない場合や、相続人が相続放棄をした場合などに発生します。
また、契約内容によっては、原状回復義務が大家側にあると判断されることもあります。特に孤独死のように発見が遅れたケースでは、室内の損傷が激しく、原状回復が困難になるため、費用が高額になります。
このようなリスクに備えて、一部の大家さんは「孤独死保険」に加入していることもあります。物件の所有者としては、契約時に清掃費用の負担者を明確にし、トラブルを未然に防ぐことが大切です。
特殊清掃にかかる費用の相場と内訳

特殊清掃の費用は、作業の内容や現場の状況によって大きく異なります。ここでは基本的な料金や相場をご紹介します。
基本作業ごとの料金目安
特殊清掃には複数の作業が含まれ、それぞれに費用が発生します。たとえば、室内の消臭作業は約30,000円から、除菌・消毒作業は20,000円〜50,000円程度が相場です。また、汚染箇所の清掃や汚物の除去には50,000円〜100,000円程度かかることもあります。
遺品の分別や搬出は別料金となる場合が多く、1立方メートルあたり10,000円前後が目安です。これらの基本作業費に加えて、作業員の人件費やトラックの使用料なども含まれるため、最終的な費用は合計で10万円〜30万円になることもあります。作業内容を事前に確認し、見積もりをしっかり取ることが大切です。
状況別の費用相場(孤独死・事故死など)
特殊清掃の費用は、現場の状況によって大きく変わります。たとえば、孤独死で発見までに時間がかかった場合、体液や臭いが床や壁に染み込んでしまうため、通常の清掃よりも高度な処理が必要となり、費用は20万円〜50万円程度になることがあります。
一方で、事故死など比較的早期に発見されたケースでは、臭気や汚染の範囲が小さいため、費用は10万円前後で済むこともあります。
また、マンションの高層階や狭い場所での作業では、搬出作業の難易度が上がるため、追加料金が発生するケースもあります。状況に応じた相場を把握しておくことで、適正な費用かどうか判断しやすくなります。
費用が払えないときの現実的な対処法

特殊清掃の費用が高額で払えない場合には、いくつかの現実的な方法で対処することが可能です。
相続財産の範囲で支払う方法
特殊清掃の費用は、被相続人が残した財産の中から支払うことが可能です。なぜなら、相続財産には現金や預貯金だけでなく、不動産や有価証券なども含まれるためです。
たとえば、故人の預金口座に残高があれば、その範囲内で清掃業者に支払いを行うことができます。注意点としては、相続放棄をする前に財産を使ってしまうと、「単純承認」とみなされ、借金なども引き継いでしまう可能性がある点です。
そのため、費用の支払い前に家庭裁判所や専門家に相談することをおすすめします。相続財産の正確な把握と、法的な手続きが重要です。
費用を一時的に工面する方法(借入・補助など)
費用が用意できない場合は、借入や補助制度の利用を検討する方法もあります。たとえば、生活福祉資金貸付制度や市区町村の緊急小口資金などを利用すれば、一時的に必要な金額を借りることができます。
また、地域によっては特殊清掃に関する補助金制度がある場合もあり、申請すれば数万円の支援が受けられることもあります。こうした制度を活用すれば、急な出費でも精神的・金銭的な負担を軽減できます。
支払いが難しいと感じたら、まずは自治体の福祉窓口や社会福祉協議会に相談し、利用可能な支援策を確認しましょう。
関係者への相談・交渉で解決を図る
費用の支払いが難しいときは、まず関係者に事情を説明し、協力や猶予をお願いすることも効果的です。というのも、特殊清掃が必要となる状況は突然であり、関係者も理解を示してくれるケースが多いためです。
たとえば、物件の所有者や管理会社に支払いを分割にしてもらえないか相談したり、親族間で費用を分担する話し合いを行うことが現実的な手段となります。
事前に正直に状況を説明することで、相手側も誠実な対応をしてくれる可能性が高まります。自分一人で抱え込まず、周囲の協力を得ながら対応することが大切です。
特殊清掃で使える保険とその補償内容

特殊清掃にかかる費用は高額になることもあり、保険を活用することで費用の負担を軽くすることができます。
孤独死保険で補償される範囲と注意点
孤独死保険とは、入居者が孤独死などで亡くなった場合に、特殊清掃や原状回復にかかる費用を補償する保険です。この保険は主に賃貸住宅のオーナーが加入し、室内での死亡事故によって発生する損害をカバーします。
たとえば、遺体の発見が遅れて汚損や臭気が広がった場合、その清掃費用や家賃損失などが対象になります。ただし、補償対象には上限金額があり、契約条件によっては保険金が全額出ない場合もあるため注意が必要です。
契約時には、補償内容や免責事項をしっかり確認し、必要に応じて補償額を見直すことをおすすめします。
火災保険の特約でカバーされるケース
火災保険には、「孤独死特約」や「死亡事故対応特約」などが付帯できる場合があり、特殊清掃費用を補償するケースがあります。
通常の火災保険では特殊清掃は対象外ですが、こうした特約を付けることで、孤独死や事故死によって発生する原状回復費用や消臭作業などもカバーできます。たとえば、においや汚れがひどい場合の壁紙交換費用なども補償されることがあります。
ただし、特約を付けていない場合は対象外となるため、加入中の保険の補償内容をあらかじめ確認しておくことが重要です。賃貸物件のオーナーだけでなく、入居者本人が加入しているケースもあるため、契約内容の把握がカギになります。
保険適用時の注意点と申請の流れ
保険を使って特殊清掃費用をまかなうには、正しい手順と書類の準備が必要です。まず、清掃が必要になった時点で、保険会社に連絡し、補償の対象となるか確認します。
次に、業者からの見積書や作業報告書、写真などを揃え、保険会社に提出します。審査の後、条件に合致すれば保険金が支払われます。ただし、申請時期が遅れると補償の対象外になることもあるため、迅速な対応が大切です。
また、申請内容に不備があると保険金の支払いが遅れたり、減額される場合もあります。トラブルを避けるためにも、申請前に必要書類や手続きの流れを保険会社に確認しておくと安心です。
費用の負担を軽減するための予防策

特殊清掃の費用は高額になりがちですが、事前の対策によって費用の発生や負担を抑えることが可能です。
異変の早期発見で清掃範囲を抑える
費用の負担を減らすためには、異変を早く発見することがとても重要です。なぜなら、亡くなった方が長期間放置されることで、体液やにおいが広がり、清掃範囲が広がるからです。
たとえば、孤独死が早く見つかれば、床や壁の張り替えなどの大がかりな原状回復が不要となり、費用も10万円以下に抑えられることがあります。近所づきあいや定期的な連絡、訪問を通じて、異常に気づきやすい環境を整えることが有効です。
また、高齢者や一人暮らしの方がいる家庭では、定期的に安否確認を行う仕組みをつくることが、結果的に特殊清掃費用の大幅な削減につながります。
生前整理や見守りサービスの活用
生前整理や見守りサービスを利用することも、特殊清掃費用を抑える効果的な方法です。なぜなら、物が少ない部屋では清掃がしやすく、時間も費用も削減できるからです。
たとえば、生前整理を行っておくと、遺品の整理や廃棄物の処分が少なくて済み、費用は数万円の節約につながる場合があります。また、見守りサービスを導入していれば、万が一の異変にもすぐ対応でき、孤独死のリスクを減らすことが可能です。
最近では、センサーやカメラを使った見守りも普及しており、安価で始められるものもあります。事前に備えておくことが、精神的な安心と経済的な負担軽減の両面で役立ちます。
まとめ
特殊清掃の費用は、連帯保証人や相続人、物件の所有者が支払うことになるケースが多く見られます。費用相場は現場の状況によって異なり、数万円から数十万円になることもあります。もし費用の支払いが難しい場合は、相続財産を使う方法や借入・補助制度の利用、関係者との相談などが有効です。
また、孤独死保険や火災保険の特約で費用をカバーできる場合もあります。早期発見や見守り体制を整えることで、将来の負担軽減にもつながります。