孤独死が起きた場合、現場の清掃には特殊な技術と知識が必要です。通常の掃除では対応できないため「特殊清掃」が必要となり、その費用や相場が気になる方も多いでしょう。
本記事では、特殊清掃の平均費用や料金の内訳、費用を安く抑える方法まで、分かりやすくご紹介いたします。
孤独死現場の特殊清掃にかかる費用と平均相場

孤独死が起きた現場では、通常の清掃では対応できないため特殊清掃が必要です。費用の相場を知ることで、適切な業者選びと予算の準備ができます。
特殊清掃の全国的な平均費用
孤独死後の特殊清掃にかかる全国的な平均費用は、おおよそ15万円〜30万円程度です。これは、現場の状態や必要な作業によって異なります。たとえば、死後の発見が遅れていた場合や、体液が床に浸透していた場合は、その処理に専門的な技術が必要となり、費用が高くなりがちです。
基本料金に加えて消臭作業や害虫駆除が加算されることもあります。つまり、特殊清掃の平均費用は一律ではなく、現場ごとの状況が大きく影響するため、まずは相場を把握してから見積もりを取ることが大切です。
原状回復・消臭・害虫駆除などの基本項目と料金
特殊清掃にはいくつかの基本作業があり、それぞれに費用がかかります。たとえば、体液の除去や消毒といった原状回復作業は3万円〜10万円が目安です。消臭作業には専用のオゾン脱臭機を使用することが多く、これには5万円〜10万円ほどかかります。
また、害虫が発生している場合には駆除作業が必要で、これも3万円前後が相場です。このように、特殊清掃は複数の専門的作業の組み合わせで成り立っており、それぞれの工程に適正な料金が発生します。見積書にはこれらの項目が明記されているかを確認しましょう。
遺品整理との違いによる費用の差
特殊清掃と遺品整理は似ているようで役割が異なります。特殊清掃は主に汚染や臭気の除去など、衛生的な問題の対処を目的としています。一方、遺品整理は故人の所有物を仕分け・処分する作業が中心です。そのため、費用の内容や内訳も異なります。
特殊清掃では消臭や除菌、害虫駆除などが必要になり、1回の作業で10万円以上になるケースもあります。対して遺品整理は、作業員の人数や回収する物の量に応じて5万円〜20万円ほどが相場です。両方を同時に依頼することでトータル費用を抑えられることもあるため、業者に相談されるのがおすすめです。
間取り・部屋タイプ別で見る特殊清掃費用の目安

特殊清掃の費用は、部屋の広さや間取りによって大きく変わります。ここでは、間取り別に想定される料金の目安を紹介します。
1R・1Kなど小規模部屋の料金相場
1Rや1Kのような小さな部屋では、特殊清掃の費用は比較的安く済む傾向があります。平均的には5万円〜15万円程度が相場です。なぜなら部屋が狭いため作業範囲が限られており、必要な時間や人手も少なくて済むからです。
ただし、死後の発見が遅れた場合や臭いが強く残っている場合には、脱臭や消毒に追加費用がかかることがあります。つまり、狭い部屋でも状況次第で金額は変動します。費用を正確に知るには、現地調査と見積もりを依頼することが重要です。
ファミリー向け間取りでの費用の傾向
2LDKや3DKなどファミリー向けの間取りでは、特殊清掃の費用は20万円〜40万円程度になることが多いです。広い部屋数に加え、複数の箇所に清掃や消臭が必要なケースが多いためです。
特に浴室や寝室、リビングなど複数の場所に体液や臭気が及んでいる場合、作業時間や人員も増え、費用も高くなります。また、家具や遺品の量が多いとその分の処分費も追加されます。
家全体に影響が広がっている場合には、早めに専門業者に相談することで費用を最小限に抑えられる可能性があります。
部屋の広さと作業時間の関係性
部屋の広さは、特殊清掃にかかる時間や費用に大きく影響します。一般的に、広い部屋ほど作業範囲が広がるため、必要な清掃時間や人員も増加し、その分費用も高くなります。
たとえば、1Kの部屋では半日程度で作業が完了することもありますが、3LDKになると2日以上かかるケースもあります。また、広い空間は臭いの拡散範囲も広くなるため、脱臭作業にかかる時間も増える傾向があります。
費用と時間を正確に知るためには、間取りだけでなく清掃が必要な範囲を詳しく業者に伝えることが大切です。
特殊清掃費用が高くなる主な原因と影響

特殊清掃の費用は現場の状況によって大きく変わります。ここでは、費用が高額になる主な原因について解説いたします。
死後発見までの日数と汚染の進行度
特殊清掃の費用は、亡くなってから発見されるまでの日数が長いほど高くなります。なぜなら、時間の経過とともに体液や腐敗臭が周囲に広がり、床や壁に浸透するからです。
たとえば数日以内であれば清掃で済む場合もありますが、1週間以上経っていた場合は床材の張り替えや構造部分の除去が必要になることもあります。
このように、発見が遅れるほど汚染の範囲や深さが広がり、作業工程も増えるため、結果として費用が高くなってしまいます。早期の発見と対応が費用抑制の鍵となります。
浴室・トイレ・布団など清掃困難な箇所
特殊清掃で費用が上がる原因のひとつが、清掃が難しい場所に汚れが及んでいるケースです。たとえば浴室やトイレは湿気が多く、腐敗の進行が早いため、タイルや目地の奥に体液や臭いが染み込んでしまうことがあります。
また、布団やマットレスも体液を大量に吸収しやすく、廃棄処分と脱臭作業が必要になるため費用が増えます。これらの箇所は汚染除去に時間がかかり、専用の薬剤や機材も必要です。
そのため、通常の部屋に比べて清掃が難しい場所が多いほど、料金が高くなる傾向があります。
臭気・害虫の程度による脱臭や駆除費の増加
強い臭いや害虫の発生も、特殊清掃費用を押し上げる要因です。孤独死現場では腐敗が進むと強烈な悪臭が発生し、さらにハエやウジなどの害虫が発生することもあります。
こうした場合には、オゾン脱臭機や専用の消臭剤による対応が必要となり、脱臭作業だけで5万円〜10万円程度の費用がかかることがあります。また、害虫駆除には専門の薬剤や防護装備が必要となるため、作業費がさらに加算されます。
つまり、臭いや害虫の発生度合いが強いほど、より高度な対処が必要となり、費用も比例して高くなります。
特殊清掃の料金内訳と項目別の相場目安

特殊清掃にかかる費用は、作業内容ごとに異なります。ここでは主な作業項目とその相場をご紹介いたします。
消臭・除菌・害虫駆除など作業ごとの金額
特殊清掃では、汚れの除去に加えて消臭・除菌・害虫駆除といった専門作業が必要です。まず消臭作業はオゾン脱臭機や薬剤を使用し、5万円〜10万円ほどが相場です。
除菌については、人体に無害な薬剤を噴霧する処理で2万円〜5万円程度となります。害虫駆除は、ハエやゴキブリ、ウジ虫などの発生状況に応じて3万円〜7万円程度が一般的です。
これらはすべて衛生状態を安全に保つために欠かせない作業です。作業の範囲や使用する機材によって費用は変動しますので、見積もりで内訳をよく確認しましょう。
廃棄物の処分・遺品の整理費用の内訳
特殊清掃には遺品や汚染された家具、日用品などの廃棄物処分費も含まれます。遺品の整理は、作業員1名あたりの単価で算出されることが多く、1Kの部屋で5万円〜10万円が相場です。
汚染がひどい場合は、処分品に特別な袋や処理が必要となるため、さらに費用が加算されます。また、家電や大型家具を含む場合、自治体の規定に従って処分料が発生します。
遺品整理だけでなく廃棄処分までを一括で頼める業者を選ぶと、手間が省け費用も抑えやすくなります。事前に何が含まれるかをしっかり確認することが大切です。
原状回復工事の必要性と別途費用の有無
特殊清掃後、臭いや汚れが床や壁に深くしみ込んでいる場合、原状回復工事が必要になることがあります。これは床材の張り替えや壁紙の交換、場合によってはフローリングや下地の撤去作業まで含まれ、費用は10万円〜30万円程度が相場です。
特に死後発見が遅れたケースでは、腐敗による損傷が激しく、大掛かりな工事が必要になることも珍しくありません。原状回復は特殊清掃とは別扱いになることが多いため、見積もり時に費用が含まれているかを確認する必要があります。追加工事がある場合は、契約前に詳細を把握しておきましょう。
特殊清掃の費用は誰が負担するのか?

特殊清掃にかかる費用は、状況によって負担する人が異なります。ここでは主な負担者の違いや補償制度を解説します。
遺族・家主・管理会社の負担の違い
特殊清掃費用の負担者は、基本的に故人の遺族が第一候補とされます。ただし、故人が賃貸物件に住んでいた場合は、大家さんや管理会社との契約内容によって負担が分かれることもあります。
たとえば、原状回復義務が借主側にある契約なら遺族側の負担になりますが、そうでない場合は家主側が一部または全部を負担するケースもあります。
遺族がいない、または相続放棄した場合には、最終的に家主が負担することもあるため、契約時に賃貸契約書を確認することが大切です。
火災保険・孤独死保険で補償される費用
特殊清掃にかかる費用は、加入している保険の種類によっては補償される場合があります。たとえば、賃貸住宅に付帯されている火災保険の中には、孤独死や事故による特殊清掃費をカバーする特約が含まれていることがあります。
また、最近では「孤独死保険」と呼ばれる特化型保険も登場しており、清掃費用だけでなく家賃損失や原状回復費も補償対象に含まれるケースがあります。
保険適用には条件がありますので、事前に保険会社に問い合わせて確認しておくことが大切です。
裁判所を通じた相続放棄後の支払い義務
相続放棄をすれば、原則として特殊清掃費用など故人に関する一切の負債を支払う義務はなくなります。相続放棄とは、家庭裁判所に申し立てを行い、法的に故人の財産も負債も一切引き継がないことを意味します。
この手続きが正式に認められれば、遺族は特殊清掃費を支払う義務も免除されます。ただし、放棄の前に費用を立て替えてしまった場合や、葬儀後に整理を始めた場合は「相続した」とみなされることもあるため注意が必要です。早めの判断と専門家への相談が安心につながります。
特殊清掃業者の正しい選び方と注意点

特殊清掃を依頼する際は、信頼できる業者選びがとても大切です。契約前に確認すべきポイントをしっかり押さえましょう。
見積書・契約書の確認ポイント
特殊清掃を依頼する際は、必ず見積書と契約書の内容をよく確認しましょう。なぜなら、口頭だけのやり取りではトラブルの元になるからです。見積書には作業内容や料金の内訳、追加費用が発生する条件が明記されている必要があります。
また、契約書にはキャンセル料や支払い方法、作業完了後の対応についての記載があるかを確認しましょう。もし内容が不明確な場合は、契約を急がず質問して納得することが大切です。
書面の確認を怠らず、信頼できる業者かどうかを見極めてください。
実績・資格・対応範囲から見る信頼性
業者の信頼性を判断するには、実績や資格の有無を確認することが大切です。特殊清掃は高度な技術と知識が求められるため、経験の浅い業者では適切な処理ができない可能性があります。
たとえば「事件現場特殊清掃士」などの資格を持っている業者は、一定の知識と実務経験がある証拠になります。また、遺品整理やリフォームなど周辺業務も一括対応している業者は利便性が高く、信頼しやすいです。
公式サイトや口コミで実績や対応範囲を確認し、安心して任せられる業者を選びましょう。
説明の丁寧さや対応スピードの重要性
特殊清掃を依頼する際、業者の説明が丁寧であることや対応の速さはとても重要です。なぜなら、現場の状況が深刻であるほど迅速な対応が求められるからです。
例えば見積もり依頼や質問に対してすぐに返答があり、言葉づかいも丁寧な業者であれば、作業中も安心して任せられます。一方で、対応が遅かったり説明が曖昧な業者は、トラブルの原因になることもあります。依頼前のやり取りで、信頼できる態度かどうかをしっかり見極めることが大切です。
特殊清掃費用を安く抑えるための現実的な方法

特殊清掃の費用は高額になることがありますが、工夫次第で負担を軽減できます。現実的な節約方法を紹介します。
保険や公的支援制度を活用する
特殊清掃の費用を抑えるには、保険や公的制度の活用が有効です。たとえば火災保険に「孤独死特約」が付いている場合、清掃費や原状回復費が補償されることがあります。
また、自治体によっては高齢者や生活困窮者の遺族に対して、清掃費用の一部を助成する制度を設けていることもあります。
これらの制度は、申請や条件の確認が必要ですが、費用を大きく減らせる可能性があります。保険内容を確認し、役所にも問い合わせてみるとよいでしょう。
複数業者から見積もりを取り比較する
特殊清掃を安く依頼するには、複数の業者から見積もりを取って比較することが重要です。なぜなら、業者ごとに料金設定や作業内容が異なり、1社だけでは適正価格か判断しにくいからです。
たとえば同じ作業内容でも、5万円以上の差が出ることもあります。最低でも2~3社から見積もりを取り、費用の内訳や対応の丁寧さも比べてみてください。
安さだけでなく、信頼できるかどうかも選ぶポイントです。比較することで、納得できる価格とサービスを選べます。
遺品の買取サービスで実質負担を減らす
特殊清掃とあわせて遺品整理を行う場合、買取サービスを活用すると実質的な費用負担を軽くできます。価値のある家財やブランド品、骨董品などを専門業者に査定してもらうことで、現金化が可能です。
たとえば数万円〜十数万円の買取金額が出ることもあり、その分を清掃費用に充てられます。また、買取と同時に処分もしてくれる業者なら、手間も省けて一石二鳥です。
買取希望がある場合は、事前にその旨を業者に伝え、対応しているか確認しましょう。
よくある質問(FAQ)

特殊清掃を初めて依頼される方は、不安や疑問を抱えることが多いです。ここではよくある質問をわかりやすく解説いたします。
- 特殊清掃と遺品整理はどう違うのか?
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特殊清掃と遺品整理は目的や作業内容が異なります。特殊清掃は、孤独死や事故死などがあった現場を清掃・消臭・除菌し、衛生的に安全な状態に戻すことが目的です。
一方、遺品整理は故人の遺品を整理・分類・処分する作業で、心の整理も含まれるのが特徴です。つまり、特殊清掃は衛生や原状回復が中心で、遺品整理は故人の持ち物をどう扱うかが焦点となります。両方の作業が必要な場合も多いため、状況に応じて適切に使い分けましょう。
- 作業にかかる日数や時間はどのくらい?
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特殊清掃にかかる時間は、現場の状態や作業内容によって異なります。軽度な汚染であれば、半日から1日で完了することもありますが、死後の発見が遅れた場合や広い部屋では2〜3日以上かかることもあります。
特に臭気が強く染みついていたり、害虫が大量発生していたりする場合は、消臭や除菌に時間が必要です。また、原状回復工事が必要なケースでは、さらに日数がかかります。事前に見積もり時に作業期間の目安を確認しておくと安心です。
- 清掃後に臭いや害虫は本当に残らないのか?
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清掃後に臭いや害虫が残るのではと心配される方も多いですが、適切な特殊清掃を行えば基本的に問題ありません。専門業者はオゾン脱臭機や高性能な薬剤を使い、臭いの原因を元から除去します。
また、ハエやウジなどの害虫も徹底的に駆除し、再発しないよう対策を施します。ただし、建材の奥まで体液が染み込んでいる場合は、床や壁の張り替えが必要になることもあります。完全な除去を目指すには、経験豊富な業者に依頼することが大切です。
まとめ
孤独死が発生した現場では、通常の掃除では対応できないため、専門的な特殊清掃が必要となります。費用は間取りや汚れの程度によって異なり、5万円〜30万円以上かかることもありますが、保険や補助制度を活用すれば負担を軽減できます。
信頼できる業者を選ぶためには、見積書の内容や対応の丁寧さ、実績をしっかり確認することが大切です。事前に相場や仕組みを理解しておくことで、安心して適切な対応が取れるようになります。