孤独死や事故の現場を清掃する「特殊清掃」は、社会に必要とされる仕事ですが、その給料や年収について気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、特殊清掃員の仕事内容や平均年収、正社員とアルバイトの違い、向いている人の特徴まで、わかりやすく解説いたします。
特殊清掃員の仕事内容とは

特殊清掃員の仕事は、一般の掃除とは異なり、孤独死や事故現場などの特殊な環境を清掃・消毒する専門職です。命に向き合う重要な役割を担っています。
孤独死・事故死現場での清掃作業
特殊清掃員は、孤独死や事故死が起きた現場の清掃を行います。これは非常に重要な仕事です。なぜなら、放置された現場は感染症のリスクや強い臭いがあり、通常の清掃では対応できないからです。
実際、亡くなった方の体液や血液が床に染み込んでいたり、夏場であれば腐敗が進み虫が発生していたりすることもあります。そこで特殊清掃員は、専用の薬剤や道具を使って、現場を清潔で安全な状態に戻します。人が亡くなった直後の現場を清掃するという仕事は、精神的な負担もありますが、遺族や関係者にとって大きな支えとなります。
このように、孤独死や事故死の現場を適切に処理することは、社会的にも非常に意義のある仕事と言えるでしょう。
血液や体液の除去と消臭・害虫駆除
特殊清掃では、血液や体液の除去、消臭、害虫駆除が重要な作業です。なぜなら、これらが放置されると衛生面で非常に危険だからです。たとえば、体液が床に染み込むと、強い悪臭やカビの原因になります。
また、遺体の腐敗によってウジやハエなどの害虫が発生することもあります。そこで特殊清掃員は、床や壁の奥まで染み込んだ体液を専用の薬剤で丁寧に除去し、オゾン脱臭機などを使って臭いを取り除きます。
さらに、殺虫剤や防虫処理を使って、害虫の発生を防ぎます。これにより、建物の再利用や売却も可能になる場合があります。このように、清掃だけでなく衛生管理や害虫対策まで一貫して行うのが、特殊清掃員のプロの仕事です。
遺品整理と遺族対応の役割
特殊清掃員の仕事には、遺品整理と遺族対応も含まれます。これがなぜ大切かというと、遺族の方々は突然の出来事に心の準備ができておらず、精神的な負担が非常に大きいからです。遺品整理では、故人の大切な持ち物を一つ一つ丁寧に仕分けし、必要な物は遺族に返却し、それ以外は適切に処分します。
また、現場に立ち会う遺族への配慮や、思い出の品についての相談に乗ることもあります。ときには、孤独死で長期間発見されなかった場合など、遺族が現場に入れない精神状態のこともあります。
そうした場面で、清掃だけでなく心のケアを担うのも特殊清掃員の役割です。このように、遺品整理と遺族対応は、単なる作業以上に、人と人との信頼関係を築く大切な仕事です。
特殊清掃員の給料と年収の相場

特殊清掃員の収入は雇用形態によって大きく異なります。ここでは、アルバイトと正社員の給料や年収の実情、安いと感じられる理由についてご紹介します。
アルバイトの時給・日給の実情
特殊清掃のアルバイトは、時給ではなく日給で支払われることが多いです。なぜなら、現場ごとの作業時間や内容が大きく異なるからです。実際の日給は15,000円〜25,000円程度が一般的で、時給に換算すると1,500円〜2,500円程度になる場合もあります。
ただし、作業内容が過酷で精神的負担も大きいため、単純な時給の高さだけで判断するのは危険です。また、現場が毎日あるとは限らず、シフト制やスポット的な勤務が多いため、月収にすると安定しない傾向があります。
そのため、「高時給=高収入」とは限らず、収入面では不安定さもある職種です。以上のように、アルバイトは高日給に見えても、働き方次第で収入が大きく変わることをご理解ください。
正社員の月給・年収とその内訳
特殊清掃の正社員として働く場合、月給は約20万円〜30万円が一般的です。なぜなら、基本給に加え、現場手当や危険作業手当などが含まれるからです。年収で見ると、約300万円〜450万円程度が相場とされています。
ただし、経験年数や担当する業務範囲によって収入は大きく変動します。例えば、リーダーや現場責任者になると、年収500万円以上を目指すことも可能です。また、資格を取得して作業の幅を広げたり、残業や夜間対応をこなすことで手当が加算されることもあります。
このように、正社員はアルバイトと比べて安定した収入が得られる反面、責任も大きくなります。給与の内訳を理解し、自分に合った働き方を選ぶことが大切です。
給料が安いと感じる理由とは
特殊清掃員の給料は「仕事の大変さに比べて安い」と感じる方が多いです。その理由は、仕事内容の過酷さと精神的な負担が大きいからです。例えば、孤独死現場の清掃や遺体の処理、強い臭い・害虫への対応など、一般的な仕事に比べて負担が桁違いです。
そのため、高日給・高月給であっても、「これだけの仕事量や精神的ダメージに見合っているのか」と疑問を感じる人もいます。また、社会的にあまり知られていない職業のため、業界全体の待遇が改善されにくいという背景もあります。
さらに、地域差や会社によっては待遇に大きな差が出るため、不公平感を持つ人もいます。このように、給料の金額自体よりも、仕事内容とのバランスに納得できないことが「安い」と感じる主な理由なのです。
他職種と比べて本当に給料は安いのか?

特殊清掃員の給料は他の職業と比べてどうなのか気になる方も多いと思います。ここでは平均年収や業界内の差、収入を上げる方法をご紹介します。
全国平均年収との比較
特殊清掃員の年収は、全国平均年収と比べるとやや低めとされています。なぜなら、日本の平均年収は約458万円(国税庁調べ・令和4年)ですが、特殊清掃員の年収はおおよそ300万〜400万円程度だからです。
たとえば、未経験から入社した場合、最初は月給20万前後のことが多く、平均よりも年収が下回るケースが見られます。しかし、これはあくまでスタート時の話であり、経験を積んだり、責任あるポジションに就いたりすることで年収は上がっていきます。
つまり、全国平均より低く見えても、成長次第で差を埋めることが可能です。このように、全国平均年収との比較から見るとやや安めではありますが、キャリア次第で十分に上回る可能性もあるのです。
同業他社や業界内での差
特殊清掃業界では、同じ職種でも会社によって給料に大きな差があります。これは、業務内容や現場数、企業規模、福利厚生などが異なるからです。たとえば、都市部に拠点を持ち、孤独死や事故物件を多く扱う大手企業では、月給25万円以上や年収500万円超も見込める場合があります。
一方で、地域密着型の中小企業では現場数が少なく、年収300万円前後にとどまることもあります。また、資格手当や夜間手当などが支給される会社と、そうでない会社でも収入に大きく差が出ます。つまり、特殊清掃の仕事自体よりも「どの会社で働くか」によって年収が変わるのが実情です。このように、同業他社間での差を知ることは、納得のいく職場選びに欠かせません。
年収アップを実現する働き方
特殊清掃員として年収アップを目指すには、戦略的な働き方が重要です。なぜなら、単に現場をこなすだけでは収入は頭打ちになるからです。まず一つ目の方法は、資格を取得することです。
たとえば、事件現場特殊清掃士や遺品整理士の資格は、信頼性が高まり、責任ある業務を任される可能性が上がります。二つ目は、経験を積んで現場責任者や管理職を目指すことです。リーダー職になると手当が付き、年収が大きく伸びる傾向にあります。三つ目は、夜間対応や緊急出動のシフトにも積極的に入ることです。
これらには高めの手当がつくため、月収ベースでも大きな差が生まれます。このように、自ら工夫して働くことで、特殊清掃員でも十分に高収入を実現することが可能です。
特殊清掃員に向いている人の特徴

特殊清掃の仕事は、清掃技術だけでなく心や体の強さ、人への思いやりが求められます。ここでは、特殊清掃員に向いている人の特徴をご紹介いたします。
精神的に安定している人
特殊清掃員に向いているのは、精神的に安定している人です。なぜなら、孤独死や事故現場の清掃では、強い臭いやショッキングな光景に直面することがあるからです。たとえば、現場によっては遺体の痕跡が残っていたり、部屋全体に腐敗臭が染みついていたりする場合があります。
そういった状況でも冷静に作業を進めるには、感情に流されすぎず、一定のメンタルバランスを保てることが大切です。また、遺族対応では悲しみに寄り添う優しさと、過剰に感情移入しすぎない距離感の両方が求められます。
このように、精神的なタフさと落ち着きを持っている方は、特殊清掃という仕事に強く向いていると言えるでしょう。
体力に自信がある人
体力に自信がある人も、特殊清掃員に非常に向いています。その理由は、作業が長時間におよぶことが多く、重い荷物を運んだり防護服を着て動いたりするためです。たとえば、真夏の密閉された部屋で完全装備の状態で何時間も作業をすることもあります。
さらに、家具の移動や大型ごみの撤去、害虫の駆除など、肉体的にハードな作業が続くことも日常茶飯事です。このような仕事は、体力がなければ安全にこなすことが難しく、疲労が蓄積するとミスやケガの原因にもなります。
ですので、日頃から運動習慣がある方や、長時間立ち仕事に慣れている方にとっては特に向いている職業です。体力に自信があることは、特殊清掃で活躍する大きな強みになります。
社会的使命感を持てる人
社会的使命感を持てる人は、特殊清掃の仕事に大きなやりがいを感じやすいです。なぜなら、この仕事は単に部屋をきれいにするだけではなく、「人の最期を尊重し、遺族や地域社会を支える」重要な役割があるからです。
たとえば、孤独死の現場では、誰にも看取られず亡くなった方の最期を丁寧に処理し、ご遺族の心の整理をサポートすることになります。また、事件や事故の現場を原状回復することは、建物の再利用や地域の安心にもつながります。
このような背景から、「誰かの役に立ちたい」「社会に必要とされる仕事がしたい」と考えている方は、この職業に強い意味を見出すことができるでしょう。使命感を持って働けることは、長く続けるための大きな力になります。
特殊清掃の求人とキャリアの築き方

特殊清掃の仕事に就くには、正しい求人の探し方や必要な条件を知ることが大切です。ここでは採用基準からキャリアアップの方法まで詳しくご紹介します。
正社員として採用されるための条件
特殊清掃で正社員として採用されるには、いくつかの基本条件を満たす必要があります。まず、18歳以上であることが基本で、高校卒業程度の学力が求められることもあります。加えて、普通自動車免許を持っていると現場移動がスムーズなため、採用されやすくなります。
また、遺体現場や孤独死の清掃に抵抗がないことや、体力と責任感を持って作業に取り組める姿勢も重視されます。未経験でも応募可能な企業も多いですが、過去に清掃や介護の経験があると評価が上がる傾向があります。このように、特殊清掃の正社員になるには、専門資格がなくても挑戦できますが、基本的な体力・精神力と誠実な姿勢が重要とされています。
求人の探し方とおすすめ媒体
特殊清掃の求人を探すには、専門性の高い媒体を活用することが効果的です。なぜなら、一般的な求人サイトには掲載数が少なく、見つけにくいことがあるからです。
具体的には、「Indeed」や「求人ボックス」などの総合系求人サイトのほか、清掃業や建築業に特化した専門求人サイトも有効です。また、「事件現場特殊清掃士」などの資格を扱う協会のホームページでも、信頼性の高い求人情報が掲載されていることがあります。
地域密着の企業の場合は、公式サイトで直接求人を出していることもあるため、気になる会社があれば直接調べるのもおすすめです。このように、多角的に求人を探すことで、自分に合った働き方を選びやすくなります。
昇給・キャリアアップの道筋
特殊清掃員として昇給やキャリアアップを目指すには、計画的な取り組みが必要です。なぜなら、現場ごとのスキルや信頼の積み重ねが昇進の鍵を握るからです。
たとえば、作業責任者として現場をまとめられるようになると、現場手当が加算される場合が多く、月給や年収が大きく上がります。さらに、「事件現場特殊清掃士」や「遺品整理士」といった資格を取得することで、社内外での評価が高まり、管理職や指導員などの上位ポジションへの道も開けます。
また、独立して自分の会社を立ち上げる方も少なくありません。このように、経験・資格・人間関係をバランスよく育てていくことで、特殊清掃の分野でもしっかりとキャリアを築くことが可能です。
まとめ
特殊清掃は、孤独死や事故の現場をきれいにし、遺族や地域の安心を守る大切な仕事です。給料は安いと感じられることもありますが、仕事内容の大変さや社会的意義を考えると、やりがいのある職業です。
年収はアルバイトと正社員で差があり、経験や資格、勤務先によって大きく変わるのが特徴です。また、精神力や体力、社会貢献の気持ちがある人に向いています。正しい求人の探し方やキャリア形成の工夫によって、収入アップも十分に可能です。