警察と特殊清掃の関係とは?許可が必要な理由を解説

事件や事故が起きた現場では、警察の捜査が完了するまで特殊清掃に入ることはできません。そのため、警察との関係や許可の有無が重要です。
警察は特殊清掃にどこまで関与するのか
特殊清掃が必要な現場では、まず警察が事件性の有無を調べます。つまり、警察は「現場検証」と「遺体搬送」までを担当し、それ以降の清掃作業には基本的に関与しません。
つまり、警察は特殊清掃そのものを行ったり管理したりする立場ではありません。たとえば、事件性のない孤独死などでも、第一発見者が通報すれば警察が現場に入り、検死を行います。
その後、現場の引き渡しを受けた家族や管理者が、特殊清掃業者を自分で探して依頼するのが一般的です。このように、警察は現場保全と調査の役割にとどまり、清掃に関しては関与しないという点を理解しておくことが大切です。
清掃開始までに必要な警察の手続きと許可の有無
特殊清掃を始めるには、まず警察による現場検証と遺体の搬送が終わっている必要があります。現場が「捜査中」であるうちは、関係者であっても勝手に中に入ることはできません。
特に事件性が疑われる場合は、現場が数日間封鎖されることもあります。では、清掃を始めるのに特別な「許可」が必要なのかというと、法律上、警察から明確な許可証が発行されるわけではありません。
ただし、捜査終了後に警察から「現場に入っても問題ない」と口頭または書面で伝えられることがあります。つまり、特殊清掃には形式的な許可は不要ですが、捜査完了の確認は必須です。この確認を怠ると、証拠隠滅と誤解されるリスクもあるため注意が必要です。
警察が業者を紹介してくれるのか?よくある誤解
多くの方が誤解しがちですが、警察は特殊清掃業者を紹介することは基本的にありません。警察の役割は、あくまで事件の捜査や遺体の搬送、現場の検証です。そのため、清掃作業や遺品整理の業者選びは、遺族や物件の管理者が自分で行う必要があります。
現場で警察に「清掃業者を教えてほしい」と聞いても、「民間のことなので紹介できません」と断られることがほとんどです。誤解の原因としては、警察が一連の手続きの中心にいるため、業者手配までしてくれると考えてしまうケースが多いからです。
実際には、特殊清掃業者は民間サービスのため、信頼できる業者を自ら調べて選ぶことが求められます。この点を理解しておくと、トラブルを避けることができます。
特殊清掃が必要な主なケースとは

特殊清掃は、通常の掃除では対応できない深刻な状況で必要になります。特に事件・事故・孤独死の現場でよく求められます。
事件・事故・孤独死などの現場の特徴
特殊清掃が必要な現場には、共通した特徴があります。それは「人の死によって生じた汚染や臭いが強い」という点です。たとえば、事件現場では血液が大量に飛び散っていたり、孤独死では遺体の発見が遅れ、腐敗が進んでいたりします。こうした現場では、体液や異臭、害虫の発生が見られることが多く、通常の掃除では対応できません。
また、事故死ではガラスの破片や機械部品などの危険物が散乱していることもあります。このように、事件・事故・孤独死の現場は「安全で衛生的な状態に戻す」ために専門的な対応が求められるのです。そのため、特殊清掃のプロによる作業が必要となります。
一般清掃と特殊清掃の違いとは
一般清掃と特殊清掃には、大きな違いがあります。まず、目的が異なります。一般清掃は日常的な掃除で、ホコリや汚れを取り除くことが目的です。
一方、特殊清掃は事件や孤独死など、非日常的な状況で発生する汚染を除去するための専門作業です。次に、使われる機材や薬剤も違います。特殊清掃では、防護服や強力な消臭剤・除菌剤、高性能な清掃機器が使われます。さらに、臭いや害虫の対策、感染症リスクへの対応など、知識と経験が必要な工程も含まれます。
このように、特殊清掃は「高度な技術と安全対策を要する特別な清掃」と言えるでしょう。見た目をきれいにするだけでなく、安全性や衛生面を徹底するのが特殊清掃の役割です。
放置すると発生する二次被害とリスク
特殊清掃が必要な現場を放置すると、さまざまな二次被害が発生します。まず最も深刻なのが「異臭」です。腐敗臭や体液のにおいが建物中に広がり、近隣住民から苦情が入ることもあります。
次に「害虫の大量発生」です。ハエやゴキブリ、ウジ虫などが湧き、衛生環境が急激に悪化します。また、「建物へのダメージ」も見逃せません。床や壁にしみ込んだ体液は、時間が経つほど深く浸透し、原状回復が困難になることがあります。
さらに、感染症のリスクもあります。血液や体液にはウイルスや細菌が含まれている可能性があり、放置すれば健康被害の恐れも出てきます。このように、早急に特殊清掃を行わないと、大きなトラブルにつながるため、迅速な対応が必要です。
特殊清掃の依頼から作業完了までの流れ

特殊清掃は警察の捜査が終わってから始まります。依頼から作業完了までの手順を知っておくことで、スムーズに対応できます。
警察の現場検証後にできること
警察の現場検証が終わった後、初めて特殊清掃の手配が可能になります。まずは現場の立ち入り許可が出たことを確認し、そのうえで専門業者へ連絡を入れます。この時、状況を詳しく伝えるとスムーズです。
現場の状態(臭い、汚れ、遺体発見までの期間など)によって必要な清掃内容が変わるからです。その後、業者が現地調査に来て見積もりを作成し、問題がなければ作業日程を決定します。
つまり、警察の検証終了は「清掃のスタートライン」です。この流れを把握しておくことで、慌てずに行動でき、二次被害の拡大も防げます。
作業内容と使用される専用機材の概要
特殊清掃では、一般的な掃除では扱わない専用機材や薬剤が使われます。作業内容は、まず汚染物の除去から始まり、血液や体液、汚物などを適切に処分します。
次に、オゾン発生器や業務用の脱臭機を使って強烈なにおいを取り除きます。さらに、細菌やウイルスの除去を目的とした消毒・除菌作業も行います。この際には、防護服やゴーグル、特殊なマスクを着用し、作業員の安全にも十分配慮されます。
また、床材や壁紙が汚染されている場合は、それらを撤去・交換することもあります。このように、特殊清掃は「見えない部分まで徹底的に安全・衛生的にする作業」なのです。
作業完了までにかかる時間と工程の目安
特殊清掃の作業時間は、現場の状況によって大きく変わります。たとえば、遺体の発見が早く、汚染が軽度な場合は半日から1日程度で終わることがあります。
一方、腐敗が進み臭気や害虫が広がっている場合は、2~3日以上かかるケースもあります。工程としては、①汚染物の回収・撤去 → ②清掃 → ③消臭・消毒 → ④必要に応じてリフォームの順で進みます。
これらはすべて専門知識と機材を必要とするため、プロの業者でなければ対応できません。作業時間の目安を知っておくと、予定も立てやすくなり、家族や関係者への説明もしやすくなります。事前の見積もりで、作業日数の確認を行うことが大切です。
特殊清掃にかかる費用と見積もりのポイント

特殊清掃には専門的な作業が必要なため、費用は決して安くありません。費用の内訳や見積もり時の確認点を知ることが大切です。
費用相場と項目別の内訳
特殊清掃の費用は、作業内容や現場の状態によって異なりますが、一般的な相場は約5万円〜30万円程度です。内訳としては、まず「汚染物の除去費用」が発生します。これは血液や体液、廃棄物の処理にかかる費用です。
次に「消臭・除菌費用」があり、オゾン脱臭機や専用薬剤を使った処理が含まれます。さらに、「作業員の人件費」や「交通費」「防護服などの資材費」も加算されます。
また、床や壁の交換が必要な場合は、別途リフォーム費用が発生することもあります。つまり、清掃だけでなく周辺の修復にも費用がかかるため、全体の見積もりを細かく確認することが重要です。
業者に依頼する際に確認すべきポイント
特殊清掃を業者に依頼する際は、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。まず「見積もりが明確かどうか」です。料金に何が含まれていて、何が別料金なのかをしっかり説明してくれる業者を選びましょう。
次に、「実績や資格の有無」も重要です。特殊清掃には専門知識が必要なため、経験が豊富で、事件現場や孤独死などの対応経験がある業者が安心です。また、「対応のスピード」もポイントです。においや害虫の問題がある場合、早急に作業できるかどうかが大切です。
最後に、契約書の内容をよく読み、追加費用やキャンセル規定なども確認しておくと安心です。信頼できる業者を選ぶことが成功のカギです。
清掃後に必要な対応とは

特殊清掃が終わった後も、遺品の整理や部屋の修復といった対応が必要になります。次のステップを理解しておきましょう。
遺品整理の流れと注意点
特殊清掃後には、遺品整理が必要になります。まず行うべきは、「残された物の仕分け」です。貴重品や書類などを選び出し、それ以外は処分や供養の対象になります。
注意すべきポイントは、「気持ちの整理と安全面の確保」です。中には感情的に整理しづらい物もありますし、臭いや汚染が残っていることもあります。そのため、遺品整理業者に依頼することも選択肢の一つです。プロは供養の手配や不用品の適切な処分もしてくれます。
また、相続に関わる書類や金銭的な価値のある物は、必ず保管しておくことをおすすめします。計画的に整理を進めることで、精神的な負担を軽減できます。
原状回復とリフォームの選択肢
特殊清掃が終わったあとは、「原状回復」または「リフォーム」のどちらかの対応が必要になることがあります。原状回復とは、元の状態に戻すことを意味し、特に賃貸物件では退去時に必要です。
たとえば、フローリングの張り替えやクロスの貼り直しなどが該当します。一方で、汚れやにおいが深く染みついている場合は、部分的なリフォームだけでは対応できず、大がかりな工事が必要になるケースもあります。
そのため、業者に現地を確認してもらい、どこまで回復が必要か判断してもらうのが確実です。費用や工期を比較しながら、自分にとって最適な方法を選ぶことが大切です。
まとめ
特殊清掃は、事件や孤独死、事故現場など、一般的な掃除では対応できない状況で必要となる専門的な作業です。警察の現場検証が終わった後でなければ清掃を始めることはできず、許可の有無や作業の流れを正しく理解しておくことが重要です。
また、費用の内訳や業者選び、清掃後の遺品整理や原状回復なども含めて、全体の対応を考える必要があります。いざという時に慌てず対応できるよう、事前に正しい知識を持っておくことが大切です。