大切な家族が亡くなると、すぐに向き合わなければならないのが「遺品整理」です。しかし、相続との関係を知らないまま進めてしまうと、相続財産の見落としや相続税の申告漏れ、家族間のトラブルにつながることがあります。
本記事では、遺品整理を正しく行うための手順や注意点を、初めての方でも分かりやすく解説いたします。後悔しない相続のために、ぜひ参考にしてください。
相続において遺品整理が重要な3つの理由

相続では、故人が残した財産を正しく整理することがとても大切です。遺品整理を丁寧に行うことで、相続財産の見落としを防ぎ、必要な書類を発見し、相続人同士のトラブルを避けることにつながります。
理由1:相続する財産を正確に把握するため
遺品整理を行う最大の目的の一つは、故人が残した財産を正確に把握することです。相続財産には、預金や現金、貴金属、不動産、有価証券、貯蓄型保険など、さまざまな種類があります。
中には家のどこかにしまい込まれている通帳や、家族が知らなかった金融資産が含まれていることも珍しくありません。また、故人名義の借金や支払い義務が残っている場合もあります。財産の状況を把握しないまま遺品を処分してしまうと、せっかく残された資産が失われたり、後から借金が見つかって困る可能性もあります。
そのため、遺品を一つひとつ確認し、価値があるもの・負債になるものの両方を明らかにすることが大切です。遺品整理は、正しい相続手続きと相続税対策のための第一歩となります。
理由2:遺言書や重要な契約書類を見つけ出すため
遺品整理をする大きな理由の一つは、遺言書や契約書などの重要書類を見つけることです。遺言書は相続手続きにおいてもっとも重要な書類であり、これが見つかるかどうかで相続内容が大きく変わる場合があります。
また、保険証券、不動産の権利証、年金関連書類、株式の通知書、貸金庫の契約書など、財産権に関わる情報が遺品の中に紛れていることも多いです。特に自筆証書遺言の場合は、机の引き出しや本棚などに保管されているケースが多く、見落としが起きやすいです。
これらの書類を発見できなければ、正しい相続が行えず、後から損をする可能性もあります。遺品整理を通じて重要書類を丁寧に探し出すことは、相続手続き全体の安全性とスムーズさを左右する重要な作業です。
理由3:相続人同士のトラブルを未然に防ぐため
遺品整理をしっかり行うことは、相続人同士のトラブルを防ぐためにも非常に重要です。相続では「誰が何を受け取るか」が争いの原因になりやすく、特に形見分けや価値のある遺品がある場合は感情的な対立に発展することがあります。
相続財産が正確に整理されていないと、「あの品物はどこに行った?」「勝手に処分された」という不信感が生まれ、家族関係が悪化することも少なくありません。遺品整理を相続人全員で話し合って進めることで、公平性を保ちながら整理ができ、それぞれが納得した形で相続を進められます。
また、第三者である専門業者や弁護士が関わることで、感情的な衝突を避けられる場合もあります。丁寧な遺品整理は、故人を思いやる気持ちを共有しながら、家族の絆を守るための大切なプロセスです。
遺品整理は誰が行う?費用は誰が負担する?

遺品整理は、故人の財産を引き継ぐ相続手続きの一部として扱われます。そのため、誰が片付けをするのか、また費用は誰が支払うのかを正しく知ることが大切です。事前に相続人同士で話し合うことで、トラブルを避けることができます。
原則として法定相続人全員に遺品整理の義務がある
遺品整理を行うのは、原則として法定相続人全員の責任です。法定相続人とは、配偶者・子ども・親・兄弟姉妹など、民法で定められた立場の人を指します。相続では、相続人の一部だけが勝手に遺品を処分すると「不公平だ」と感じられ、後でトラブルに発展することがあります。
そのため、遺品整理は相続人全員で協力し、お互いに内容を確認しながら進めることが理想です。また相続放棄を考えている人がいる場合でも、遺品整理に関わりすぎると「相続を承認した」と判断されてしまう可能性があります。
そのため、相続人の状況をしっかり確認しながら対応する必要があります。家族だけで調整が難しい場合は、弁護士や専門業者など第三者の助けを借りることで、公平性を保ちつつ遺品整理を進めることができます。信頼関係を守るためにも、話し合いと役割分担が重要です。
遺品整理にかかる費用は相続財産から支払うのが一般的
遺品整理には、物の仕分けや搬出、処分にかかる費用が必要です。費用が発生した場合、その支払いは原則として故人の財産(=相続財産)から行うことが一般的です。相続財産には、預金や現金だけでなく、不動産や有価証券などの資産も含まれます。
相続財産から支払うことで、相続人の個人的な負担を避けられます。ただし、相続財産が少なく、費用がまかないきれない場合には、相続人が立て替えて支払う必要が生じることもあります。また、相続放棄を検討する人が費用を払ってしまうと、「相続を受け入れた」と判断される可能性があるため、注意が必要です。
費用の支払い方法について相続人同士が納得できる形にしておくことで、後々のトラブルを避けることができます。専門業者に依頼する場合は複数社から見積もりを取り、費用の妥当性を確認することも大切です。
後悔しないための遺品整理の5つのステップ

遺品整理は気持ちの面でも体力面でも大変な作業です。しかし、正しい手順を踏めばスムーズに進み、相続のトラブルも防げます。ここでは、後悔しないために知っておきたい5つの基本ステップを分かりやすくまとめました。
ステップ1:遺言書の有無を最優先で確認する
遺品整理を始める前に、最優先で行うべきことは「遺言書の確認」です。遺言書がある場合、相続の分け方や特別な希望が書かれているため、それに従って遺品整理や相続手続きを進めなければなりません。
特に、自筆証書遺言は机の引き出しや本棚、金庫の中などに保管されていることが多く、家族が知らない場所にしまわれているケースもあります。また、2020年以降は法務局で自筆証書遺言を保管できる制度もできているため、まずは保管の有無を照会することも大切です。
遺言書を見つけても、すぐに開封してはいけません。勝手に開けてしまうと、無効になる可能性があるため、必ず家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。遺言書の確認は、相続内容にも大きく関わる重要な工程ですので、遺品整理に取りかかる前に必ず最初にチェックしておきましょう。
ステップ2:相続人全員で集まりスケジュールと役割を決める
遺品整理は相続人全員で進めるのが原則です。そのため、作業を始める前に相続人全員で集まり、何をどの順番で行うか話し合うことが大切です。スケジュールを決めておくことで、「誰がいつ来られるのか」「どれくらいの日数が必要か」が明確になります。
また、役割分担を決めておけば、作業がスムーズに進みやすくなります。たとえば、「書類の確認係」「貴重品の管理係」「不用品の仕分け係」などを分担すると良いでしょう。さらに、相続放棄を検討している人がいる場合は、その人が遺品整理に深く関わりすぎないように調整が必要です。
相続人同士の認識がそろっていないまま進めると、「勝手に捨てられた」「無断で持ち帰った」などのトラブルが起きやすくなります。事前に丁寧に話し合うことで、お互いの気持ちを尊重しながら進めることができ、のちの相続手続きもスムーズになります。
ステップ3:遺品を「貴重品・形見分け」「売却・リサイクル」「処分」に仕分ける
遺品整理を進める際は、ただ片付けるだけではなく、遺品の性質に応じて丁寧に仕分けることが大切です。まず「貴重品・形見分け」には、現金、預金通帳、印鑑、権利証、宝飾品、アルバムなどの思い出の品が含まれます。
これらは相続財産として扱われる場合も多いため、保管場所や数量を必ず記録しておきましょう。「売却・リサイクル」に仕分けるものは、まだ価値がある家具・家電・ブランド品・骨董品などです。買取を依頼すれば、相続財産が増え、結果的に負担が軽くなる可能性があります。そして「処分」は破損したものや明らかに不要な物です。
ただし、故人の大切な思い出が含まれている場合があるため、相続人全員が納得した形で判断することが重要です。この仕分け作業を丁寧に行うことで、相続財産の把握と整理が効率よく進みます。
ステップ4:見つかった財産をリスト化し相続財産目録を作成する
遺品整理で発見した財産は、必ずリスト化し「相続財産目録」を作成することが重要です。相続財産目録とは、故人が残した資産を一覧にまとめた文書のことで、預金・現金・不動産・有価証券・保険・貴金属などを項目ごとに整理します。
財産の状況を明確にしておけば、相続税の申告や遺産分割協議がスムーズに進みます。また、目録は税理士や弁護士、司法書士など専門家に相談する際にも役立ちます。さらに、負債やローンがある場合はそれも記載することで、後から「知らなかった借金が見つかった」というトラブルを避けられます。
相続財産目録は法的な形式が定められているわけではありませんが、証拠としての役割があるため、正確な情報を漏れなく記載することが大切です。
ステップ5:法律や自治体のルールに従って不用品を処分する
不用品の処分は、法律と自治体のルールに従って行う必要があります。たとえば、大型家具や家電は自治体の回収サービスが利用できる場合がありますが、家電リサイクル法の対象品(テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機など)は別途リサイクル料金が必要になります。
また、故人の個人情報が含まれる書類類は、情報流出防止のためにシュレッダー処理や溶解処理などを行うことが推奨されます。さらに、仏壇や写真など、気持ちの整理が必要な品には供養サービスを行っている業者が存在します。
遺品整理業者に依頼する場合でも、適切に処理してくれるか確認することが大切です。法律違反の不法投棄を行うと、相続人側が罰則を受ける可能性がありますので、必ず正しい手順で処分を行いましょう。
相続財産の見落としを防ぐ!確認すべき重要書類と場所

相続財産を正しく把握するためには、遺品の中にある重要書類を見落とさずに探すことがとても重要です。どこを探せば良いのか、どんな種類の書類が財産に関係するのかを知っておくことで、相続手続きをスムーズに進められます。
探すべき書類:預金通帳、有価証券、保険証券、不動産の権利証など
相続財産の中には現金や不動産など価値のある資産が含まれます。それらを証明する重要書類を見つけることが、正しい手続きのためにとても大切です。例えば、預金通帳やキャッシュカードは故人の銀行口座を確認するために欠かせません。
有価証券の通知書や株式の配当金計算書などが見つかれば、証券会社の口座がある可能性があります。さらに、保険証券が見つかれば、死亡保険金の請求ができる場合があります。不動産がある場合は、権利証(登記識別情報)や固定資産税の納税通知書も重要な手掛かりです。
ほかにも、年金証書、クレジットカード明細、借入契約書など、資産だけでなく負債に関係する書類も確認しましょう。これらを丁寧に探し出し、整理することで、相続財産の見落としやトラブルを防ぐことができます。
探すべき場所:金庫、机の引き出し、本棚、貸金庫の契約書など
重要書類は、普段から大切に保管されている可能性が高いため、保管場所の予想も大切です。一般的には、金庫、机の引き出し、書類棚、本の間、バッグの中などに保管されていることが多いです。
特に自宅に金庫がある場合は必ず確認し、鍵や暗証番号が分からない場合は相続人の立場で業者に相談することもできます。また、貸金庫を利用している場合もありますので、貸金庫の契約書や銀行からの郵便物が残っていないかチェックすることが重要です。
郵便物には金融機関や証券会社からの通知書が含まれていることもあり、財産の手掛かりとなります。さらに、故人が普段使っていたカバンやコートのポケットに大事な書類が入っているケースもあるため、細かい場所まで慎重に確認することが大切です。
見落としやすいデジタル遺品(ネット銀行やSNS)も確認する
近年はネット銀行やネット証券、スマホ決済アプリなど、デジタル上に財産を持つ方が増えています。これらは通帳が存在しないため、見落としやすい相続財産です。
また、ポイントサービスやオンラインショップの残高も財産として扱われる場合があります。さらに、SNSやメールアカウントには故人の連絡先や写真、契約情報が残っていることもあります。スマートフォンやパソコンの中に情報が集中しているため、パスワードの管理が重要です。
手がかりとして、パスワードをメモしたノートやアプリの通知・メール内容を確認すると良いでしょう。また、契約内容についてはサポート窓口に問い合わせることで手続きを進められることがあります。デジタル遺品は、知らないまま放置すると相続漏れの原因になるため、必ず確認するようにしましょう。
遺品整理と相続税で知っておきたいポイント

遺品整理では、見つかった財産が相続税の対象になるか正しく判断することが大切です。また、必要な知識を知らないと損をしてしまう可能性があります。相続税の仕組みと手続き期限を理解し、余計なトラブルを避けましょう。
骨董品や美術品など価値のあるものは相続税の課税対象になる
遺品整理で発見される財産には、預金や不動産だけでなく、骨董品や美術品、貴金属などの高価なものが含まれている場合があります。これらは市場価値があるため、相続税の課税対象として扱われます。
たとえ相続人が価値に気づいていなくても、税務署は資産として評価しますので注意が必要です。特に、絵画・掛け軸・陶器・勲章・ブランド品などは専門家による査定を行った方が良いこともあります。万が一、価値があるものを「不用品」として処分してしまうと、財産の見落としと判断され、相続税の申告漏れにつながる可能性があります。
相続税のルールでは「相続財産を隠すこと」はペナルティの対象となるため、勝手に売却したり捨てたりしないことが重要です。遺品整理の段階で多くの財産に触れることになるため、適切な評価と管理を行う意識が必要です。
遺品整理の費用は相続税の控除対象にはならない
遺品整理には多くの費用がかかりますが、残念ながらその費用は相続税の控除対象にはなりません。控除できるのは、葬式費用や相続手続きに直接必要な費用などに限られています。一方、遺品整理は「家財の処分に必要な費用」と判断され、相続税計算時に差し引くことはできません。
そのため、費用の支払い方法については相続人同士で前もって相談し、相続財産から支払うか、各自が負担するかを決める必要があります。また専門業者へ依頼する場合は料金に差が大きく出ることも多いため、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。
費用が大きいからといって、相続人の判断で無断に財産を売却すると税務上の問題が生じる可能性があるため注意が必要です。正しい理解を持って進めることで、トラブルや余計な支出を防ぐことができます。
相続税の申告と納付は相続開始から10ヶ月以内に行う
相続税の申告と納付には期限があり、「相続開始(亡くなった日)から10ヶ月以内」に行う必要があります。この期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税がかかり、負担が大きくなる可能性があります。
遺品整理には時間がかかることが多いため、財産の把握に手間取っているうちに申告期限が近づいてくるケースも少なくありません。また、相続税の申告が必要かどうかは「相続財産の総額」で決まるため、早めに財産の調査を進めることが大切です。
複雑な財産がある場合や評価が難しい場合は、税理士に相談して申告準備を進めると安心です。期限を守るためにも、遺品整理と相続手続きは同時並行で進めることが重要です。余裕を持ったスケジュールを立てて、正しい申告を行いましょう。
自分たちでの遺品整理が難しい場合は専門業者への依頼も検討

遺品整理は時間も労力もかかり、精神的にもつらい作業です。遠方に住んでいたり、仕事や家庭の都合で十分な時間が取れない場合は、専門業者に依頼することで負担を大きく減らせます。信頼できる業者を選ぶことが大切です。
時間や手間を大幅に削減できるのが専門業者に頼むメリット
専門業者に依頼する最大のメリットは、時間と手間を大幅に減らせることです。遺品整理には、仕分け・運び出し・処分・清掃など多くの工程があります。
これを相続人だけで行うと、数日どころか数週間以上かかることもあります。特に一軒家まるごとの整理となると、家具や家電の搬出に力も必要となり、高齢の相続人が対応するのは難しい場合があります。一方、遺品整理業者は専門知識と経験を持っており、作業を効率よく進めるプロフェッショナルです。
相続人が判断しづらい品物についても相談しながら進めてくれるため、精神的な負担も軽減されます。また、自治体ルールに沿った適切な処分方法や供養が必要な品物への対応も安心して任せられます。仕事や遠距離などの理由で時間が取れない方にとって、専門業者の力は大きな助けになります。
複数の業者から見積もりを取って信頼できる業者を選ぶ
専門業者を選ぶ際は、1社だけで決めず、必ず複数の業者から見積もりを取ることが重要です。業者によって料金体系が異なり、同じ作業内容でも費用に大きな差が出ることがあります。また、見積もりの時点でスタッフの対応や説明の分かりやすさを確認することで、信頼できる業者かどうか判断しやすくなります。
さらに、遺品の取り扱い方法や貴重品管理、個人情報保護対策がしっかりしているかもチェックすべきポイントです。口コミや実績、自治体からの許可の有無(古物商許可や一般廃棄物収集運搬許可など)を確認すると安心です。
悪質な業者に依頼すると、不法投棄などのトラブルにつながり、相続人に責任が及ぶ可能性があります。複数社の比較を行い、費用だけでなく信頼性とサービス内容を総合的に見て選ぶことが大切です。
まとめ
遺品整理は、相続財産を正しく把握し、相続税の申告や遺産分割をスムーズに進めるための大切な作業です。遺言書の確認から始まり、相続人全員で話し合いながら、遺品を丁寧に仕分けることが重要です。
また、財産の見落としを防ぐために、重要書類やデジタル遺品までしっかり確認しましょう。価値のある遺品は相続税の対象となる場合があるため、勝手に処分せず専門家に相談することもおすすめです。
時間的・体力的な負担が大きい場合は、信頼できる専門業者に依頼することでリスクを減らせます。正しい知識と準備で、後悔のない遺品整理を進めていきましょう。







