ゴミ屋敷への行政代執行は簡単ではない。多くの手続きと時間が必要

ゴミ屋敷は地域全体の問題でもあり、最近では行政が対策に乗り出しています。なぜ自治体や地域でゴミ屋敷の対策をしなければならないのか、国の法律や現状の問題点についてまとめました。条例が定められているなら、まずは窓口へ相談しましょう。

本記事の監修者

遺品整理士:目黒 大智


一般社団法人遺品整理士認定協会 認定遺品整理士(第 IS26076号) 年間1000件以上の不用品回収、遺品整理案件に携わる。「遺品整理・不用品回収の片付け業者 CLEAR-クリア-」代表取締役。詳しいプロフィール
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ゴミ屋敷は地域にとって大きな問題

ゴミ屋敷があると、害虫発生・異臭などで地域にも問題を生み出します。火災が発生すれば、周辺の家も危険です。

家が適切に管理されないことで、治安の悪化を招き、周辺住民の暮らしも脅かされてしまいます。

害虫や異臭など衛生面の悪化

ゴミが外まであふれ出すような状態では、害虫が大量発生してしまうでしょう。また、ゴミによるガスの発生や悪臭も心配です。

衛生的にも問題があり、住人だけでなく近所の住民にも多大な迷惑をかけます。庭やベランダなどのゴミは勝手に処分もできないため、害虫や悪臭などのトラブルがあっても、なかなか解決できません。

虫は家の中だけでなく、近くの民家や公共の道路などにも移動します。虫が広がることになれば、周辺の店舗や民家も不衛生な状態になってしまうでしょう。

火災のリスク

ゴミが燃えて大きな火災が起これば、周辺の家も危険です。死者やけが人が出なかったとしても、家財が燃えるなど大きな問題が発生します。

火災は火元に責任を追及できないため、もしゴミ屋敷が原因でも賠償金などを請求するのは難しいでしょう。各自が火災保険に入っていなければ、身を守ることもできません。

ゴミ屋敷があるだけで、無関係な住民が火災で負うリスクは倍増してしまうのです。

治安や暮らしへの影響

ゴミが大量にある家なら、周りにゴミを捨ててもわからないだろうと不法投棄を誘発する恐れがあります。

景観が悪化することで犯罪の温床になりやすく、周辺住民の暮らしにも影響します。また、害虫が多くゴミの悪臭が漂う場所に行きたがる人は少なく、犯罪者が隠れやすくなるなど治安が悪くなるとも考えられるでしょう。

なぜ行政の対応が必要?

ゴミ屋敷に対応しようとしても、法律があるわけではありません。ゴミを溜めているからといって違法ではないため、説得するしか方法がないのが現状です。

最近では自治体が独自に条例を制定し、ゴミ屋敷に対応できるよう制度を作るところが増えています。周辺住民が見ているだけしかできない状況を打破するため、行政による対応は欠かせません。

現在の法制度では強制力がない

国で定められた法律には、ゴミ屋敷に対するものはありません。敷地内にある物は基本的に住人の財産のため、強制的に処分できないことになっています。

違法であれば民間でも処分や対応が可能ですが、ゴミ屋敷は他人の迷惑になるだけで法律違反とまではいきません。対策するなら自治体で条例を作り、強制力を持たせる必要があります。

行政指導や強制撤去はできない

国の法律では、住人がゴミではなく必要な物だと主張すると行政指導や強制撤去もできません。また、ゴミ屋敷に住んでいる人の中には、好きでゴミを集めている人もいます。他人がいくらゴミだと感じても、その人にとっては思い入れがある物なのでしょう。

ゴミ屋敷への対応がうまくいかないのは、私有物をゴミと断定できないことも原因でしょう。

説得に応じない場合が多い

ゴミ屋敷になっていることに悩んでいる住人も中にはいますが、様々な要因がありゴミの中で暮らしている人は、説得に応じてくれることは少ないでしょう。

もしゴミを捨てたいと考えていたとしても、お金がなければ撤去に同意もできません。大量のゴミを捨てるには、かなりのお金がかかります。自分で片付けられずゴミ屋敷になってしまっている人は、ゴミ処理費用が出せなければ散らかる一方です。

もしゴミだと認めて強制撤去されれば、住人に費用が請求されます。実は費用のことで困り、ゴミと認めないケースもあるでしょう。

行政代執行の内容と流れ

自治体の条例でゴミ屋敷対策を行っている場合、行政代執行が行われます。まずは近隣住民からの相談を受け、調査や指導をしても改善が見られないときに限って強制処分が可能になる仕組みです。

ただし、一度指導して改善されないだけで、すぐに対応できるものではありません。何度も住人を説得し、どうしても改善できないと判断されれば行政代執行が行われるため、中には数年間改善できないケースもあります。

近隣住民からの相談を元に調査

対策条例を設けている自治体は、近隣住民からゴミ屋敷に関する相談を受け付けています。状況確認や調査を行い、本当に近隣住民の迷惑になっているなら本格的な対策が必要です。

調査の結果、対策するかは自治体の判断に委ねられます。単に少し見た目が古い家である場合や、ゴミが散らかっているわけではないと判断されれば、条例の対象外になります。

ゴミ屋敷住人への指導、勧告

調査の結果、ゴミ屋敷であると判断されれば、実際に担当者が訪問してゴミ屋敷の住人に指導や勧告が行われます。

自治体の条例に違反していることや、近隣の迷惑になっていることを伝え、改善できないか説得を続けることが基本です。もし、ゴミ屋敷住人が近隣の迷惑に気づいていなかった場合、この時点で改善が見られることもあります。

問題は、ゴミをゴミだと認識していないケースです。他人から見て明らかにゴミでも、自分にとっては必要な物だと主張されると、なかなか改善が見込めません。

是正されない場合行政代執行へ

いくら伝えても状況が是正されず、近隣の迷惑になっている場合は行政代執行が行われます。しかし、実際に自治体が強制的にゴミを処分するのはレアなケースです。

数年前に京都市で初めて行政代執行が行われましたが、自治体によっては強制処分にまで発展しません。多少なりとも改善が見られる場合もあり、すぐに処分はできないためです。

また、幾度も期限を設けているため説得に時間がかかることも原因でしょう。

行政代執行にも課題は多い

行政代執行は、ゴミ屋敷に悩む近隣住民にとって希望の光です。しかし、課題も多く、即座に対応ができるわけではありません。

手続きは段階を分けて行われるため、時間もかかります。また、撤去費用をいつ誰が負担するのかも課題となっています。

手続きに時間がかかる

相談してから調査が行われ、ゴミ屋敷であると認定されるまで時間がかかります。また、住人との面談の日取りなども調整しなければいけません。対策窓口の担当者が、ゴミ屋敷の住人と会えなければ、なかなか話が進まないこともあります。

また指導や通告をしても、すぐさま住人が対応するとは限りません。長い間進展しないこともあり、その間近隣住民は対応を待つしかないため、時間がかかりすぎることは問題として挙げられています。

撤去費用の問題

行政代執行の費用は、いったん自治体が負担したとしても、最終的にはゴミ屋敷の住人が支払います。貯金や親族によるサポートがあればすぐに対応できますが、中にはそのように支払う能力がない場合もあるでしょう。

ゴミ屋敷の強制処分は税金と同じで、払うことから逃れられるわけではありませんが、住人に収入がなければ差し押さえもできません。

ゴミの撤去には、数十万〜100万円以上かかることがあります。自治体が負担するわけにもいかないため、撤去費用の請求に関する話し合いが長引くケースもあるようです。

まとめ

ゴミ屋敷の対策には、行政の力が必要です。法律でははっきり違法と言えないため、民間や周辺住民での対応ができません。

自治体で条例が定められていれば、状況によってゴミ処分も可能です。地域の住みやすさや治安などもかかわってくるため、各自治体での条例の整備が急がれます。

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